心室中隔欠損〔しんしつちゅうかくけっそん〕 家庭の医学

 左右の心室を隔てる心室中隔に孔(あな)があいている病気で、先天性心疾患のなかでもっとも頻度の高い病気です。

 心臓が収縮するときに圧力の高い左心室から低い右心室へ血液が流れ、肺へ行く血液量が増加し、その血液がふたたび心臓へ戻るので、心臓に負担がかかります。
 孔が大きいものほど重症で、生後1カ月すぎから心不全症状があらわれます。孔が小さければ無症状で、心不全も出現しません。
 治療は、利尿薬や強心薬を服用しますが、心不全が改善しなければ乳児期に手術が必要となることもあります。
 状態が安定していれば就学前に手術をおこないます。手術は人工心肺を用いて心臓を停止させた状態で心臓を切り開き、孔を当て布(自己心膜やウマ心膜など)でおおい、縫い合わせてふさぎます。手術が必要なのにそのままにしておくと、肺高血圧が進行し、重度になると右心室から左心室へ静脈血が流れ込みチアノーゼを呈するアイゼンメンゲル症候群になり、手術ができず手遅れになってしまいます。
 特に、ダウン症候群では肺高血圧の進行が早く、乳児期に高度の肺高血圧を呈し、手術ができなくなる可能性があります。小さな孔で心臓に負担がかかっていない場合は、手術は必要ありません。3~4歳までに自然閉鎖することもあります。いっぽう、孔が小さくても、感染性心内膜炎(心臓内に細菌のかたまりが付着するために全身に細菌がまかれる重篤な病気)の予防のために、抜歯などの際には、あらかじめ抗菌薬を内服する必要があります。
 また、孔の大きさに関係なく、孔が大動脈弁に近いと弁が孔に落ち込み変形をきたし、手術が必要となります。

【参照】心臓の病気:心室中隔欠損

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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