肺吸虫症〔はいきゅうちゅうしょう〕

 人に寄生する肺吸虫は、世界で7種類知られています。このうち、日本でよくみられるのはウエステルマン肺吸虫と宮崎肺吸虫です。
 ウエステルマン肺吸虫はモクズガニ、サワガニ、イノシシ肉を生で食べて感染します。西日本や九州地方で多くみられます。人の糞便中の虫卵が水に落ち、孵化(ふか)した幼虫が貝(カワニナ)に侵入、分裂・発育して次の宿主であるモクズガニやサワガニに移行、それを食べた人が感染します。また、モクズガニやサワガニをイノシシが食し、そのイノシシを人が食べることで感染します。
 宮崎肺吸虫は通常イタチやタヌキなどの肺に寄生していますが、人はサワガニを生で食べて感染します。

[症状]
 ウエステルマン肺吸虫は肺に寄生し、せきや血たんがみられます。結核や肺がんと間違われることがあります。脳、皮下、眼窩(がんか)などに寄生することもあります。また、イノシシ肉から感染した場合には、気胸(ききょう)を起こしたり、胸水がたまることもあります。宮崎肺吸虫症患者でも気胸を起こしたり胸水がたまったりします。いずれも強い好酸球増多がみられます。


[治療][予防]
 数カ月以内に淡水産カニやイノシシ肉を食べたか否かを医師に話してください。診断は便検査、血清や胸水を用いた免疫診断でおこない、陽性の場合はすぐ駆虫が必要です。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 松岡 裕之)
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