職場などの健康診断で「血圧がやや高め」と指摘されたが、特に何もしていないという人は少なくない。横浜市立大学公衆衛生学准教授の桑原恵介氏らは、就労世代8万例超を対象に、最新の血圧区分を用いて分類した血圧と心血管疾患(CVD)との関連を検討。やや高めとされる正常高値血圧でもCVDの発症リスクが約2倍になること、CVD発症への影響は正常高値血圧~軽度高血圧で大きいことが明らかになったと、Hypertens Res2024年4月8日オンライン版)に報告した。

集団寄与危険割合を算出し、CVDへの影響力を推計

 CVDは日本人の死因の第2位、職場における労働損失の原因疾患としては第3位と報告されている。CVDの発症に高血圧が寄与していることは周知だが、日本人を対象に血圧値を詳細に分類しCVDリスクを検討した研究は少なく、正常高値血圧がCVDに及ぼす影響は不明である。

 そこで桑原氏らは今回、職域多施設研究J-ECOHスタディのデータを用いて、就労世代の血圧高血圧治療ガイドライン2019の血圧分類で層別化し、CVDとの関連を検討した。対象は、J-ECOHスタディの参加企業に勤務し、2010~11年度に定期健康診断を受診した高血圧の治療歴がない20~64歳の就労者8万1,786例。2021年3月まで、最長9年間追跡した。

 血圧区分は、収縮期血圧(SBP)120mmHg未満、拡張期血圧(DBP)80mmHg未満を「正常血圧群」とし、SBP 120~129mmHgかつDBP 80mmHg未満を「正常高値血圧群」、SBP 130~139mmHgかつ/またはDBP 80~89mmHgを「高値血圧群」、SBP 140~159mmHgかつDBP 90~99mmHgを「Ⅰ度高血圧群」、SBP 160~179mmHgかつ/またはDBP 100~109mmHgを「Ⅱ度高血圧群」、SBP 180mmHg以上かつ/またはDBP 110mmHg以上を「Ⅲ度高血圧群」とした。

 Cox比例ハザードモデルを用いて、2011年度時点(一部2010年度)の企業、性、年齢、喫煙状況、糖尿病の有無、脂質異常症の有無、BMIを調整後のハザード比(aHR)を算出した。また、CVDに対する血圧の影響を推計するため集団寄与危険割合を算出した。

今後は正常高値、高値を正常に戻した後のCVDリスク検証を

 追跡期間中に334例がCVDを発症した。

 正常血圧群を基準としたCVD発症のaHRは、正常高値血圧群で1.98(95%CI 1.49~2.65)、高値血圧群で2.10(同1.58~2.77)、Ⅰ度高血圧群で3.48(同2.33~5.19)、Ⅱ度高血圧群で4.12(同2.22~7.64)、Ⅲ度高血圧群で7.81(同3.99~15.30)と、血圧が高いほどCVDリスクは上昇した(傾向性のP<0.001、)。

図.高血圧治療ガイドライン2019に基づく血圧分類と心血管疾患発症リスク

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(横浜市立大学プレスリリースより)

 集団寄与危険割合は、高値血圧群が最も高く(17.8%)、Ⅰ度高血圧群(14.1%)、正常高値血圧群(8.2%)が続いた。一方、Ⅱ度高血圧群(4.1%)やⅢ度高血圧群(2.1%)の占める割合は低く、正常高値血圧群からⅠ度高血圧群までの影響が大きいことが示された。

 以上から、桑原氏らは「CVD予防の観点からも、就労世代で見過ごされがちな正常高値血圧の段階から意識的に血圧管理に取り組むことが重要で、医療者にはそのサポートが求められる」と結論。今後については、「正常高値血圧、高値血圧から正常血圧に戻すことで、CVDリスクが低下するかどうかを就労世代で検証していくことが望まれる」との考えを示した。

(比企野綾子)