厚生労働省は今夏にも、引き取り手のない遺体や遺骨を巡る市区町村の対応に関する初の実態調査に乗り出す。少子高齢化に伴い1人暮らし高齢者が増加し、親族の確認に時間がかかったり、引き渡しを拒否されたりするケースが発生しているため。厚労省は複数の自治体や専門家にヒアリングを実施し、「自治体任せ」と言われる現状を把握。課題や先進事例をまとめる方針だ。
 1人暮らし高齢者の数は年々増加している。内閣府の2023年版高齢社会白書によると、20年時点の65歳以上人口に占める1人暮らしの割合は女性が22.1%、男性は15.0%。高齢者人口がほぼピークとなる40年には女性24.5%、男性20.8%にそれぞれ上昇し、計896万人と推計される。地域とのつながりの希薄化も指摘される中、引き取り手のない遺体への対応が課題となっている。
 墓地埋葬法などは、遺体の引き取り手がいない場合や見つからない場合、死亡地の市区町村が代わりに火葬すると規定する。市区町村は、親族を調査して引き取りを依頼、親族が見つからない場合や引き取りを拒否された場合は、その市区町村が火葬し遺骨を保管する―という手順が一般的。ただ、火葬のタイミング、遺骨の保管場所や保管期間などは自治体の判断に委ねられる。
 総務省が23年に公表した亡くなった人の遺留金などに関する調査の結果、全国の市区町村が保管する引き取り手のない遺骨は、21年10月時点で約6万柱に上ることが明らかになった。
 保管場所としては、市区町村が運営する墓地や納骨堂のほか、庁舎内の収納庫などが挙げられた。市区町村からは「全国的に統一的な基準を設けてほしい」といった意見も出た。これに対し、厚労省は「地域性や宗教の問題もある」とし、国による統一基準の策定には慎重な姿勢だ。 (C)時事通信社