親族がいなかったり引き取りを拒否されたりする「無縁遺体」にどう対応するか。少子高齢化が進展する中、市区町村が対応に苦慮している。自治体の間では、引き取り手が見つからない遺体や遺骨を巡るトラブルが発生。一方、こうしたトラブルを防ぎ、安らかに最期を迎えるため、単身高齢者の「終活」を支援する動きも出ている。
 名古屋市では2022年2月、身寄りのない遺体を1年以上火葬せず、葬儀会社に放置していたことが発覚。担当職員らが戒告処分となった。市によると、処分された職員は「他の事務に忙殺されていた」などと話したという。
 再発防止のため、市は同年7月、火葬に必要な確認作業を一部簡素化。それまでは配偶者と子ども、親、兄弟姉妹など全ての法定相続人に遺体引き取りの意向がないと確認した場合、市が火葬するルールだったが、対象を「配偶者」と「子ども」に限定した。警察や病院から通報を受けてから火葬までは「原則1カ月以内」を目安とし、市役所と出先機関がサーバー上で作業の進捗(しんちょく)状況を共有できる仕組みも導入した。
 京都市では、22年1月に市内で亡くなった1人暮らし男性の遺体を火葬、納骨した後、弟がいることが判明する事案が発生した。市は戸籍を調査し「親族はいない」と判断したが、火葬当時、親族確認に関するマニュアルはなかった。市は23年8月、法定相続人の範囲で親族確認を徹底することを定めたマニュアルを新たに作成した。
 ◇生前からサポート
 単身高齢者向けの終活支援に力を入れる自治体もある。神奈川県横須賀市は15年、全国に先駆け、身寄りのない低所得の単身高齢者を対象とした「エンディングプラン・サポート事業」を始めた。生前に原則27万円の費用を支払い、市内で協力する葬儀会社と契約を結ぶと、亡くなった後、希望する形式で納骨してもらえる仕組み。今年5月には登録者が延べ150人に達した。
 市の担当者は「亡くなった本人の思いを尊重できるほか、(火葬などにかかる)自治体の支出を抑えられる」とメリットを語る。 (C)時事通信社