自殺は米国の青少年の死因として、10~14歳で第2位、15~24歳では第3位を占める。精神疾患は自殺の危険因子だが、青少年自殺者のうちメンタルヘルスの障害や精神疾患の診断歴がある割合は半数に満たないことが課題となっている。米・Emory University School of MedicineのSofia Chaudhary氏らは、米疾病対策センター(CDC)の全米暴力死報告システム(NVDRS)に登録された10~24歳の青少年自殺者4万618人のデータを後ろ向きに解析する横断研究を実施。その結果、6割は精神衛生上の問題の診断を受けておらず、特に人種的マイノリティーや銃器使用者で割合が少なかったと、JAMA Netw Open(2024; 7: e2423996)に報告した。(関連記事「全米の自殺者増加に歯止めかからず」)
男性が79%、白人が76%、自殺方法は銃器使用が約半数
Chaudhary氏らは、2010~21年にNVDRSに登録された10~24歳の青少年自殺者4万618人のデータを抽出。主要評価項目は、自殺前の精神衛生上の問題による受診記録〔①米国精神医学会(APA) の『精神疾患の分類と診断の手引き第5版』(DSM-5)に記載されている障害および症候群(アルコールまたは物質依存は除く)の診断歴がある、②死亡診断書、監察医または警察の報告書などに精神衛生上の問題の治療中との記載がある-場合と定義〕とし、社会人口学的特性(人種・民族、年齢層、性)、臨床的特性、自殺の原因・方法との関連について検討した。
対象の主な背景は、男性が79.2%、女性が20.8%、年齢層は20~24歳が58.1%で最も多く、15~19歳は34.1%、10~14歳は7.8%だった。人種は白人が76.1%と最多で、次いで黒人12.7%、アジア・太平洋系が4.2%、アメリカ先住民/アラスカ先住民が2.9%、民族は非ヒスパニック系が86.8%、ヒスパニック系が13.2%などだった。自殺方法は、銃器使用が46.8%と約半数を占め、縊首(首つり・絞殺・窒息死)が37.7%、服毒が6.8%、自殺場所は自宅が64.8%、その他が35.2%だった。自殺理由は、親密なパートナーとの問題が25.2%、家族関係の問題が13.3%など。
高リスク集団に適切なスクリーニングや医療の提供を
4万618人のうち、精神衛生上の問題の診断を受けていたのは40.4%(診断群)で、約6割は診断を受けていなかった(非診断群)。診断を受けた割合は白人が42.8%で最も多く、最少はアメリカ先住民/アラスカ先住民の28.0%だった。男女別に見ると、男性の37.3%に対し女性は52.4%と多かった。非診断群と比べ、診断群では抑うつ気分(23.8% vs. 35.8%)、自殺企図の表明(18.3% vs. 27.5%)、自殺念慮の既往(19.9% vs. 48.2%)の割合が多かった。
人種・民族、年齢層、性を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、白人を基準とした場合にアメリカ先住民/アラスカ先住民〔調整後オッズ比(aOR)0.45、95%CI 0.39~0.51〕、アジア・太平洋系(同0.58、0.52~0.64)、黒人(同0.62、0.58~0.66)は、精神衛生上の問題の診断を受ける確率が低かった。非ヒスパニック系を基準とすると、ヒスパニック系で低かった(同0.76、0.72~0.82)。
一方、診断確率が高かったのは、女性(aOR 1.64、1.56~1.73)、抑うつ気分あり(同1.75、1.67~1.83)、児童虐待経験者(同3.39、2.93~3.91)などで、年齢層別では高齢なほど高い傾向にあった。
自殺方法別に見ると、銃器使用を基準にした場合、服毒(aOR 2.78、2.55~3.03)、縊首(同1.70、1.62~1.78)、その他の手段(同1.59、1.47~1.72)のいずれも診断確率が高かった。
以上を踏まえ、Chaudhary氏らは「全米の青少年自殺者を対象とした大規模研究から、自殺前に約6割が精神衛生上の問題に関する診断を受けておらず、特に人種的マイノリティーや致死率が高い銃器使用者で割合が少ないことが明らかとなった。これは、自殺高リスク集団に対し、適切なスクリーニングや医療が提供されていない実情を表すものである」と結論。その上で、「精神医療にアクセスする機会が乏しい高リスク集団におけるニーズを拾い上げ、自殺予防につながるプログラムを整備する必要がある」と付言している。
(関根雄人)