京都府立医科大学内分泌・代謝内科の高橋芙由子氏らは、40歳以上の日本人10万2,802例を対象に、飲酒量と2型糖尿病リスクの関連を調べる後ろ向きコホート研究を実施。その結果、BMI 25未満群では、1日当たりの飲酒量(純アルコール量)が39g以上の場合に糖尿病リスクが有意に29~36%上昇した。一方、BMI 25以上群では、摂取量にかかわらず飲酒は糖尿病リスクの低下と有意に関連していたとSci Rep(2024; 14: 20315)に発表した。

飲酒と糖尿病の関連、アジア人の報告は一貫せず

 飲酒はインスリン感受性を高め、HbA1cを低下させるとの報告があり、欧米の研究では適度な飲酒と糖尿病リスクに負の関連があることが示唆されている(関連記事:「食べながらワイン」で糖尿病リスク低下)。一方、アジア人での研究結果は一貫しておらず、日本人を対象とする先行研究にはサンプル数や追跡期間などの課題があった。

 そこで高橋氏らは、京都府立医科大学とパナソニック健康保険組合の共同研究であるパナソニックコホート研究の参加者のうち、2008~21年に健康診断を受けた40歳以上の参加者10万2,802例(平均年齢47.9±5.8歳、平均BMI 23.2±3.3)のデータを後ろ向きに解析し、飲酒量と糖尿病リスクとの関連を検討した。

 1日当たりの飲酒量を純アルコール量(日本酒1合=22g)に換算して分類したところ、非飲酒例の割合は35.1%、飲酒量22g未満例は36.9%、22~39g未満例は17.7%、39~66g未満例は8.7%、66g以上例は1.6%だった。

飲酒量とBMIに交互作用、BMI 25以上では24~30%のリスク低下

 中央値で7年(74万8,090人・年)追跡した結果、7,510例(7.3%)が2型糖尿病を発症した。発症率は、非飲酒例で6.9%、22g未満例で6.8%、22~39g未満例で7.8%、39~66g未満例で9.6%、66g以上例で9.2%だった。

 年齢、性、喫煙状況、運動習慣を調整して解析したところ、BMI 25未満群では、非飲酒例を基準とした場合の糖尿病リスクは39~66g未満例で有意に29%高く(ハザード比1.29、95%CI 1.16~1.45)、66g以上例では有意に36%高かった(同1.36、1.10~1.69)。反対に、BMI 25以上群では、飲酒量にかかわらず24~30%の有意な糖尿病リスク低下が示された)。

図.飲酒量別に見た糖尿病発症ハザード比

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Sci Rep 2024; 14: 20315

 糖尿病リスクとの関連について、飲酒量とBMIに交互作用が認められた(交互作用のP<0.0001)。一方で、飲酒量と空腹時血糖値、飲酒量と性に交互作用はなかった(順に交互作用のP=0.13、P=0.42)。

BMI 23未満/以上でも同様の解析結果

 感度分析としてBMI 23未満と23以上に分けて検討したところ、同様の結果が示された。

 今回の研究に関し、高橋氏らは「飲酒はアディポネクチン値やレプチン値の上昇を介してインスリン感受性を高める」と説明(関連記事「レプチン用いた1型糖尿病の新規治療法を開発」)。インスリン抵抗性が高いと予想されるBMI 25以上の例では飲酒が糖尿病リスクと負の関連を示し、BMI 25未満の例はこの恩恵を受けにくくなる可能性があると考察している。

 その上で、同氏らは「摂取量にかかわらず飲酒の有害作用を示すエビデンスがあることから、糖尿病予防のための飲酒は推奨されない」と強調している。

(編集部・畑﨑 真)