インターロイキン(IL)-10受容体(R)A欠損症は、乳児期早期に炎症性腸疾患(IBD)を引き起こす常染色体潜性(劣性)の遺伝性疾患で、根治療法は造血細胞移植(HCT)のみである。致死的な経過をたどる場合が多いが、日本での研究は症例報告に限られている。東京医科歯科大学大学院小児科発生発達病態学分野の友政弾氏らは、国内で確認されたIL-10RA欠損症7例を対象に後ろ向き研究を実施。日本における治療成績の実態を明らかにしたと、J Clin Immunol(2024; 45: 6)に発表した。(関連記事「造血幹細胞移植、全国統一患者手帳を作成へ」)
7施設と共同でIL-10RA欠損症患者の情報を集約
IL-10シグナル伝達は、消化管における免疫恒常性の維持に重要な役割を果たしており、IL-10RA遺伝子などの欠損は早期発症型を含むIBDを引き起こす。こうしたIL-10RA欠損症は、コルチコステロイド、メトトレキサート、サリドマイド、腫瘍壊死因子(TNF)α阻害薬などの免疫抑制療法に反応せず、唯一HCTによる治療効果が認められている。しかし、これまで国内におけるIL-10RA欠損症の研究は症例報告に限られており、治療成績の実態は明らかでない。
友政氏らは東北大学、国立成育医療研究センター、大阪府立病院機構大阪母子医療センター、京都大学、神奈川県立こども医療センター、群馬大学、九州大学と共同でIL-10RA欠損症患者に関する情報を集約。臨床的特徴と予後について検討する目的で後ろ向き研究を実施した。
HCT実施例は全例が生存
国内で報告されたIL-10RA欠損症患者7例中5例にHCTが実施されていた。HCT群では全例において2歳未満で移植が行われており、内訳はヒト白血球抗原半合致ドナーの骨髄移植が2例、非血縁者の臍帯血移植が2例、非血縁者の臍帯血で移植不全となったため別の非血縁者からの骨髄移植を行ったのが1例だった。全5例が生存し、全身状態(PS)の改善が見られた。一方、非HCT群のうち1例は保存療法で14歳まで生存し、別の1例はHCT施行前にインフルエンザ脳症で死亡した(図)。
図.IL-10RA欠損症患者の予後
(東京医科歯科大学プレスリリースより)
以上から、友政氏らは「HCTを施行したIL-10RA欠損症患者の生存率が60~70%程度という海外の報告に鑑みると、少数ではあるが全例が生存という国内のHCT成績は特筆すべきものだ」と結論。「合併症によりHCTの機会を逃さないよう、早期診断の重要性が示唆された」と付言している。
(編集部・小暮秀和)
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