東京慈恵会医科大などの研究チームは4日、重い腎臓病の胎児に対し、ブタの腎臓の組織を一時的に移植する臨床研究計画を同大の特別委員会に提出した。動物の臓器を人に移植する「異種移植」が実現すれば、国内で初めて。厚生労働省専門部会の審査などを経て、2026年度の実施を目指す。
 計画は、腎臓に問題があり尿が十分に作れない「ポッター症候群」の胎児2人が対象。ブタの胎児から取り出した約2ミリメートルの組織を、出産予定日の4週間前に特殊な注射器で移植する。組織から成長した腎臓に胎児の血管が入り込み、1日数十ミリリットル程度の尿を作れるようになるという。
 帝王切開による出生後、たまった尿はチューブを用いて体外に排出。2週間経過し、赤ちゃんが人工透析を安全に受けられるようになればブタの腎臓を摘出し、免疫抑制剤の投与も中止する。その後は透析に切り替え、人の腎臓移植の機会を待つ。
 研究チームは特別委員会のほか、手術を行う国立成育医療研究センター、厚労省専門部会の審査を受ける。計画が認められれば、患者を募り移植手術を進める予定だ。
 人の臓器と大きさや構造が近いブタからの異種移植は、提供臓器が不足する現状への切り札として注目されており、海外では心臓などで移植例もある。今回は透析を受けるまでの「橋渡し」の移植だが、研究チームの横尾隆・同大教授は「患者が待っている中、ようやくスタートラインに立つことができた。初めてのことなので、理解を得た上で進めていきたい」と話している。 (C)時事通信社