円安などの影響で物価が上がる一方、賃金の伸びは鈍く、苦しい生活を強いられる人も少なくない。27日投開票の衆院選で、各党は将来の賃上げなどの経済対策を公約として打ち出しているが、現在困窮している人からは、速やかな支援拡充を求める悲痛な声が上がる。
 東京都新宿区の都庁前では12日、配布される食料を求め705人が並んだ。2020年から毎週配布を続けるNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(新宿区)の大西連理事長(37)は「かつては野宿者が中心だったが、収入があっても生活が苦しい人が増えた」と指摘した上で、「生活保護手前の人たちへの支援が足りない」と国に対応を求めた。
 幾重にも折り返した列の中にいた世田谷区の志垣祐介さん(29)は現在求職中だ。「高卒で働き始めたが、次第に生活が苦しくなった。米やコーヒーなどが買うたび高くなる」と物価高を痛感している。「日々の生活で精いっぱい。貯金や結婚なんて考えられない」と表情を曇らせた。
 同じく列に並んだ豊島区の無職男性(60)は病気で退職後、生活保護に頼っている。「食費も光熱費も上がるのに生活保護の受給額は増えない」と嘆き、「福祉政策は後回しにされ続けてきた。政府は貧困を見て見ぬふりだ」と憤った。
 1人親家庭の状況も深刻だ。秋田県内で中学生の子どもを育てる30代の女性会社員は離婚後、頼れる人もなく、子どもが幼いころは満足に働けずに雑草を食べたことも。その後、収入は安定したが、行政の支援はほとんどなくなる一方で、生活費や税金などは増え、苦境は変わらないまま。「子どもに十分な生活と教育を保障してほしい」と訴えた。
 母子世帯などを支援するNPO法人「キッズドア」(中央区)が5、6月に全国の支援家庭を対象にしたアンケート調査では、約1800件の回答のうち、この1年間で家計が「厳しくなった」という世帯が98%を占めた。「子どもが常におなかを空かせている」などと窮状を訴える声もあった。
 同法人の渡辺由美子理事長は「低所得層を支援するだけではこぼれ落ちる人がいる。全ての子どもを助ける政策を最優先に行ってほしい」と話した。 (C)時事通信社