アトピー性皮膚炎(AD)に対するオンラインのセルフ認知行動療法(CBT)が普及すれば、多くの患者に心理的介入の恩恵をもたらすかもしれない。スウェーデン・Karolinska InstitutetのDorian Kern氏らは、成人AD患者168例を対象にセルフガイド型と治療者ガイド型のオンラインCBTを比較する単盲検ランダム化臨床非劣性試験を実施。その結果、自覚症状評価Patient Oriented Eczema Measure(POEM)で測定したAD症状の改善効果について、セルフCBTは臨床心理士の指導下のCBTに対して非劣性で、治療者が費やす時間や労力が軽減されたとJAMA Dermatol(2024年12月18日オンライン版)に報告した(関連記事:「アトピー性皮膚炎の治療薬で精神状態も改善」)。
治療者指導下とセルフの効果を比較
ADでは症状とメンタルヘルスの相互作用、搔破行動と皮膚バリア機能の低下によるADへの直接的影響があるため、通常の皮膚科治療に加えて心理的介入が重要な治療オプションとなる。
Karolinska Institutetの研究グループは、過去に成人AD患者102例を対象にランダム化比較試験を実施し、通常の皮膚科治療のみの対照群に比べて、インターネットを利用した治療者指導下のCBT群でAD症状の改善効果が示されたことをJAMA Dermatol(2021; 157: 796-804)で報告している。今回の研究では、セルフ用に改変した簡易版オンラインCBTプログラム(ワード数約1万7,000)の介入効果が、治療者ガイド型のオンラインCBTプログラム(同約11万1,000)に非劣性かどうかを検討した。
POEM改善は治療者指導群4.20、セルフ群4.60
対象は、2022年11月~23年4月にスウェーデンのインターネットにアクセスし登録された18歳以上のAD患者168例で、平均年齢(標準偏差:SD)が39(10.5)歳、女性が84.5%。治療者の指導なしに12週間のオンラインCBTを受けるセルフ群86例と、臨床心理士の指導下で12週間のオンラインCBTを受ける82例(治療者指導群)の2群に1:1の割合でランダムに割り付けた。
主要評価項目は、POEM(7項目を各0~4、総合評価0~28、高スコアほど重症度が高い)で測定したAD症状のベースラインから介入後までの変化とした。POEMスコア4以上の低下を有効と見なし、先行研究に基づく非劣性マージンは3とした。
参加者の90%に当たる151例から介入後主要評価項目のデータを収集した。介入後POEMは、治療者指導群で4.20(95%CI 1.94~6.05)改善したのに対し、セルフ群で4.60(同2.57~6.64)改善した。軽減の推定平均差は0.36 (片側97.5%CI、-∞~1.75) に相当し、非劣性マージン3 点を下回った。
Intention-to-treat(ITT)解析では、治療者指導群で36例(49%)、セルフ群で46例(60%)が、POEMが4点以上改善し有効と見なされた。
治療者が費やす時間や労力を軽減
副次評価項目の解析では、データ欠損率が高かったが(約30%)、両群ともQOL、睡眠、抑うつ気分、瘙痒、ストレスの指標が介入後に有意に改善した。重篤な有害事象は見られなかった。
治療の所要時間は、治療者指導群では、患者1人当たりの指導に週平均36.0(SD 33.3)分(95%CI 29.2~41.7分)と評価に14.0 (6.0)分(同 12.9~15.6分)を費やしたのに対し、セルフ群では評価のみに週平均15.8 (6.4)分(同14.2~17.4分)と推計された。両群とも週1日を治療演習に費やした患者が最多だった。
AD患者に対するCBT実施への重要なステップ
以上の結果から、Kern氏らは「セルフガイド型の介入が、これまでに評価された治療者ガイド型の介入に劣らず、費用効果の高い代替手段であることが示唆された。皮膚科診療では心理的介入はまれであるため、この研究はAD患者に対するCBT実施に向けた重要なステップだ。プライマリケア医と皮膚科専門医による治療におけるCBT介入の有効性を調査する必要がある」と結論した。
また、セルフガイド型は患者と臨床リソースの負担を軽減するとし、「臨床家はより多くの患者を助けるための時間を節約できる。また、資料を読む時間を減らし効果的な介入に早くアクセスしたい患者にとっても魅力的な代替手段となる」と述べている。
(医学ライター・坂田真子)