治療・予防

食べ物のつかえや嘔吐―食道アカラシア
~内視鏡治療も可能(昭和大学江東豊洲病院消化器センター長 井上晴洋教授)~

 食べ物が食道につかえたり、嘔吐(おうと)したりする「食道アカラシア」は最近まで外科手術以外に有効な治療手段がなかったが、内視鏡での治療も可能になった。昭和大学江東豊洲病院(東京都江東区)消化器センター長の井上晴洋教授に聞いた。

 食道がんのリスクも

 食道アカラシアは、食べ物が食道の下部にたまることで起こる。主な原因は、食べ物を食道から胃に送り込む働き(ぜん動運動)が弱いこと、食道と胃のつなぎ目にある筋肉(下部食道括約筋)が働かないことだ。

 食べ物がつかえる感じや嘔吐、体重の減少の他、胸の痛みや誤嚥(ごえん)性肺炎を起こす。重症例では食道がんのリスクが高まる懸念もある。

 専門医以外には診断が難しく、「長年つらい症状に悩まされ、当院で初めて診断に至った患者さんがたくさんいます」と井上教授。診断には、内視鏡検査、食道バリウム検査、食道内圧検査(食道のぜん動運動をみる検査)、コンピューター断層撮影(CT)検査が必須だ。

 従来は内服薬による治療が行われてきたが、症状の大幅な改善は期待しにくい。食道を膨らませる「バルーン拡張術」は短期的には有効だが、再発率が高く、根治が期待できる外科手術では傷が残るなど患者の負担が重い。

 ▽同じ治療効果を期待

 井上教授が開発した「内視鏡的筋層切開術(POEM)」は、内視鏡で患部の下部食道括約筋の一部を切開した後、抗菌薬を投与してクリップで閉じる。クリップは1カ月ほどで自然に外れ、便と一緒に排せつされる。

 2008年9月に初めて実施して以来、国内外で評価され、現在では国際的な標準治療となっている。体を傷つけず、外科手術と同等の治療効果が期待できる。

 同センターでは、検査、診断、治療方針の決定を1泊2日の入院で行う。手術に伴う入院期間は1週間前後で、治療後の検査で問題がなければ2日目に重湯から食事を開始、3~4日で通常食になる。その際、食べ物がスムーズに胃に送られることに感激する患者が多いという。

 井上教授は「当院では、2000人以上の患者さんにPOEMを行い、満足のいく結果を得ています。全国的にも施行する病院が増えています。お悩みの方はかかりつけ医の紹介で受診してください」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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