コーヒーや茶の摂取と頭頸部がん(HNC)の発生率との関係についての報告は一貫していない。世界的にHNCの負荷が増加する中、米・UCLA Fielding School of Public HealthのTimothy Nguyen氏らは、HNCの疫学に関する国際共同研究プロジェクトであるInternational Head and Neck Cancer Epidemiology consortium(INHANCE)の集積データを活用してコーヒーまたは茶(主に紅茶)とHNCとの関連を検討。ノンカフェインコーヒーを含め、コーヒーと紅茶の摂取がHNCリスクの低減と関連していることをCancer(2025; 131: e35620)に報告した。
症例対照研究14件における2.5万人超のデータを解析
INHANCEのデータベースに登録されている欧米の症例対照研究14件より、HNC患者9,548例と対照群15,783例のデータを抽出し、プール解析を実施した。INHANCEのデータを用いた同様の検討結果は2010年にも報告されているが、当時はノンカフェインコーヒーの摂取に関するデータが少なく詳細な検討ができなかった。
ランダム効果ロジスティック回帰分析を用いて、社会人口学的因子とライフスタイル因子を調整し、HNC全体と、口腔がんや咽頭がんなどの部位ごとの発症率に対するオッズ比(OR)を求めた。
コーヒーはカフェインの有無にかかわらずリスクを低下
コーヒーを飲まない人と比べ、カフェイン入りコーヒーを1日4杯以上飲む人は、HNC(OR 0.83、95%CI 0.69~1.00)、口腔がん(同0.70、0.55~0.89)、咽頭がん(同0.78、同0.61~0.99)のリスクが低かった。また、カフェイン入りコーヒーを1日3〜4杯飲む人は、下咽頭がんリスクが低かった(同0.59、0.39~0.91)。
一方、ノンカフェインコーヒーについては、飲まない人に対して飲む人全体(OR 0.75、95%CI 0.64~0.87)および1日1杯以下の人(同0.66、0.54~0.81)で口腔がんリスクの低下が認められた。
ノンカフェインコーヒーでもがんリスクが低下したことから、Nguyen氏らは、カフェイン以外の成分にもがん抑制作用があると推論している。
茶では下咽頭がんリスクが低下
茶の摂取は、下咽頭がんリスク(OR 0.71、95%CI 0.59~0.87)と逆相関していた。また、1日あたり1杯以下の摂取で、HNCのORは0.91(95%CI 0.84~0.98)、下咽頭がんのORは0.73(同0.59~0.91)となった。
しかし、茶を1日1杯以上飲む人では、喉頭がんリスクが上昇した(OR 1.38、95%CI 1.09~1.74)。これは先行研究とは相反する結果だが、Nguyen氏らは、その理由について、「先行研究は、主に緑茶を摂取しているアジア圏で実施されたものが多いが、今回のデータは主に紅茶を摂取している欧米におけるものである。原料となる植物は同じだが、紅茶は酸化発酵させるためカテキンなどの抗酸化成分が減少する」と推論している。
これらの結果を踏まえ、同氏らは「今回の知見は、コーヒーと茶の摂取がHNCのリスク低減と関連していることを支持するもの」と結論。「飲まれているコーヒーと茶の種類に地理的な違いがあることを考慮した研究を今後行い、コーヒーおよび茶の摂取と世界的なHNCリスクとの関連について理解を深める必要がある」と付言している。
(医学ライター・小路浩史)