【ソウル時事】韓国の合計特殊出生率は9年ぶりに上昇したものの、世界的に見れば極めて低い数字だ。少子化が進んだ背景や対策についてシンクタンク「韓半島未来人口研究院」の※(※マダレに臾)恵貞・研究センター長に聞いた。
 ―上昇は続くか。
 今回の上昇は、新型コロナの影響で大幅に減少していた婚姻件数が2023年以降回復した効果といえる。ただ、結婚しても子どもを持たない「ディンク族」や「子どもは1人だけ」という夫婦が増えており、婚姻の遅延効果がなくなればさらなる上昇は難しい。
 ―少子化の要因は。
 教育費や住居費の増大などの経済的要因、仕事と家庭の両立の難しさやキャリア断絶といった社会文化的要因がある。これらが複雑に絡み合っており、一つの問題が解決しても簡単に出産にはつながらない。特に社会文化的要因は個人の価値観に触れるため法や制度の改善では解決が難しい。
 ―政府の施策を評価するか。
 多額の予算を投じたのに少子化が加速したのは、最近まで若者に出産を奨励する視点から抜け出せなかったためだ。出産奨励策はあまりに安易。出産をゴールではなく人生の過程とみる(出産後に焦点を当てた)政策が必要だ。とはいえ、育児休業や配偶者出産休暇などの制度自体は他の先進国と比べても劣らない。こうした制度を実際に使えるよう、職場内保育施設の充実や育休中の社員の仕事を代替する人材をすぐに確保できるシステムの構築など、企業が実効性を高める必要がある。
 ―日本から学ぶ点は。
 韓国では少子化問題に対する社会的共感が日本に比べると形成されていないため、施策拡大への抵抗がまだ大きく、認識の転換が必要だ。「人口戦略企画省」新設計画は政治混乱でうやむやな状態になっている。子どもという視点からより包括的に取り組んでいる日本のこども家庭庁を、韓国もベンチマークにしていけたらいい。 (C)時事通信社