産休を取得できる期間が明確に規定されるなど、地方議会の女性議員が出産や子育てをしながら政治活動を続けられる環境整備が進みつつある。ただ、2024年7月時点で市区町村議会の女性議員は全体の17.9%に当たる5187人で、女性の政治参画の取り組みは道半ばだ。
◇出産予定日まで休めず
東京都豊島区議だった永野裕子さん(52)は08年、在職中に出産。妊娠初期、つわりで会合を休むと、先輩女性議員から「体調管理くらいしなさい」と怒鳴られたという。区議2期目の若手で、仕事量が多く徹夜した日もあった。当時を振り返り「おなかの子を間接的に虐待しているかもと思った」と涙ぐむ。出産予定日当日まで議会に出席し、予定日の1週間後に出産。産後1カ月で復帰した。
「このままでは良くない」と考え、任期中に出産経験のある地方議員らに呼び掛け、「出産議員ネットワーク」を設立。環境改善に向け、18年から国や地方3議長会などへの要望活動を本格的に始めた。この結果、21年に各地方議会の運営規則のひな型となる「標準会議規則」が改正され、産前6週、産後8週の産休期間が明記された。
その後、各議会でも会議規則の改正が進んだが、在任中に出産した議員のいる地方議会は依然少なく、議員の産休が「普通のこと」になったとはまだ言えない状況だ。ネットワークでは当事者らの相談に乗るなどして、議員活動との両立を支えている。
◇「各議会で女性最低3割」
女性議員を増やすためには、選挙への出馬などに対する周囲の理解も重要だ。
鹿児島県南さつま市議の平神純子さん(68)は1995年に同県加世田市(現南さつま市)の市議に初当選。当選5日後に第三子を出産した。子育て政策について質問すると「家庭の問題は議場に持ち出すな」とやじが飛んだ。
「県外の人に『男尊女卑の鹿児島』と言われたこともあり、悔しかった。当時は県内96市町村だったので、まずは各議会に1人」との思いから、96年に県内の女性議員を100人にする会を立ち上げた。候補者の「発掘」から関与。親族に子育てなどを理由に立候補に反対されたときには、平神さんも説得に立ち会い、自身の経験を語るなどした。
自身の落選時などに休会を挟みつつも会の活動を続け、100人の目標達成は間近になりつつあるという。ただ、女性1人きりの議会も少なくないとし、「各議会で少なくとも3割はいるのが理想的だ」と訴える。
◇子育て世代の声、政策に
栃木県那珂川町議の益子純恵さん(46)は2017年、三男を保育中に初当選。政策立案に自身の体験を生かしている。暑さや寒さを気にせず子どもが楽しめる場所がほしいとの同年代の声を聞き、「室内遊び場」の設置を議場で主張。町の次期子育て計画案に盛り込まれた。子どもが感染症になった場合などに備えて、町議会で行われる会議の一部オンライン化も訴えている。益子さんは「同年代のお母さんたちが、町政が身近になったと言ってくれる」とほほ笑む。
【編集後記】似た境遇の人がいないコミュニティーに入るには勇気がいる。地方議員には、地域の要職に就く男性らが推される傾向があるとも言われており、特に若い女性にとってハードルは高いと感じる。女性の力を生かせない議会では、皆が暮らしやすい政策を考えるのは難しいと思う。女性議員が少ない現状に改めて危機感を覚えた。(時事通信内政部記者・平野実季)。 (C)時事通信社
〔国際女性デー50年〕出産・子育て議員も働きやすく=地方議会、進む環境整備―女性市区町村議、なお2割満たず

(2025/03/02 09:33)