若年成人における脳卒中てんかん(PSE)は、脳卒中の主要な合併症であり、機能回復や日常生活に支障を及ぼし得る。PSEリスクの予測スコアは開発されているものの、若年脳卒中患者における妥当性の検証は行われていない。オランダ・Donders Institute for Brain, Cognition and BehaviorのEsmee Verburgt氏らは、大規模前向き観察研究のデータを用いて若年発症の脳梗塞脳出血患者における累積PSEリスクとその危険因子を検討。若年成人におけるPSEリスクの程度を明らかにするとともに、危険因子は急性期発作や皮質病変といった既存のリスクスコアに含まれるものだったとJAMA Neurol (2025年4月14日オンライン版)に報告した(関連記事「脳梗塞後のてんかんリスク評価に新指標誕生」)。

PSEに加え、脳梗塞てんかん脳出血リスクも評価

 本研究には、オランダ国内17施設で18~49歳の若齢初発脳卒中患者を対象に予後と危険因子を検討した多施設前向きコホート研究ODYSSEY※1のデータを用いた。従来のPSE研究と異なり脳出血患者も多く含んでおり、画像診断により確診の付いた患者のみが対象。登録期間は2013年5月~から21年3月で、てんかん既往のない連続1,388症例を2024年2月28日まで追跡した。

 PSEは、脳卒中発症から7日超に発生した1回以上の遅延性症候性発作と定義。累積発生関数を用いてPSEの5年累積リスクを算出した。また、Fine-Gray回帰モデルを用いて、年齢、性別、脳卒中の臨床病型、画像診断所見といった因子のうちPSEに関連する危険因子を特定した。

 さらに、C統計量とキャリブレーショングラフを用い、脳梗塞てんかんのリスクスコアであるSeLECT 2.0※2と、脳出血に対するリスクスコアであるCAVE※3の評価をそれぞれ行った。

5年累積リスクは脳梗塞後3.7%、脳出血後7.6%

 1,388例のうち、脳梗塞は1,231例(88.7%)、脳出血は157例(11.3%)だった。年齢中央値は44.1歳〔四分位範囲(IQR)38.0~47.4歳)、男性割合53.0%で、追跡期間中央値は5.3年(IQR 3.4~7.4年)だった。

 PSEを発症したのは57例(4.1%)で、PSEの5年累積リスクは、脳梗塞後で3.7%(95%CI 0.2~4.8%)、脳出血後で7.6%(95%CI 3.5~11.8%)だった。

 脳梗塞後のPSEと関連する因子は、急性期症候性発作(脳卒中発症から7日以内)〔ハザード比(HR) 10.83、95%CI 2.05~57.07、P=0.005)と皮質障害(HR 5.35、95%CI 1.85~15.49、P=0.002)だった。一方、脳出血後のPSEと関連していたのは、皮質を含む出血のみだった(HR 8.20、95%CI 2.22~30.25、P=0.002)。

 リスクスコアのC統計量は、SeLECT 2.0で0.78(95%CI 0.71~0.84)、CAVEで0.83(95%CI 0.76~0.90)で、いずれのスコアも良好な判定能を示した。

 これらの結果を踏まえ、Verburgt氏らは「若年成人におけるPSEのリスクは比較的低く、PSEに関連する因子は既存のリスクスコアに含まれるものだった。したがって、これらのリスクスコアは若年の脳卒中患者にも適用可能であると考えられる」と結論。「今後の臨床試験では、高リスク患者における一次および二次予防戦略の最適化を検討すべきである」と付言している。

1. ODYSSEY:Observational Dutch Young Symptomatic Stroke Study

2. SeLECT 2.0スコア:危険因子として、脳卒中重症度、大血管動脈硬化、早期発作、皮質障害、中大脳動脈領域の5項目を評価する

3. CAVEスコア:危険因子として、皮質を含む出血、65歳未満、血腫量、発症7日以内の早期発作の4項目を評価する

医学ライター・小路浩史