ふくらはぎ周囲長は、非侵襲的かつ容易に測定でき、急性脳卒中患者の機能的転帰の予測指標となる可能性がある。しかし、ふくらはぎ周囲長と長期の機能的転帰との関連は明らかでない。魚沼基幹病院(新潟県)リハビリテーション科の佐藤陽一氏らは、ふくらはぎ周囲長低値が脳卒中発症後12カ月の機能的転帰に関連するか否かを検討する多施設後ろ向きコホート研究を実施。急性脳卒中患者における入院時のふくらはぎ周囲長低値(男性30cm未満/女性29cm未満)は、脳卒中発症後12カ月の機能的転帰不良と関連していることをJ Nutr Health Aging2025; 29: 100483)に報告した(関連記事「握力と大腿周囲径は死亡の有用な予測因子」)。

中央値75歳の445例で検討

 対象は急性脳卒中で入院した患者。ふくらはぎ周囲長低値は男性で30cm未満、女性で29cm未満と定義した。

 機能的転帰不良は、modified Rankin Scale(mRS)スコアが3以上(すなわち3~6)で、発症前のmRSスコアに戻れないことと定義した。独立変数を低ふくらはぎ周囲長、従属変数を転帰とし、多変量ロジスティック回帰分析を行った。

 研究期間中に754例が入院。このうちデータ欠損や質問票を返送しなかった患者などを除く445例を解析に含めた。これら445例の年齢中央値は75歳〔四分位範囲(IQR)66~83歳〕、男性は62.2%、BMI中央値は23.1(同20.7~25.1)、米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア中央値は4(同2~8)だった。

 発症前のmRSスコアは、0が301例、1が50例、2が28例、3が47例、4が19例だった。ふくらはぎ周囲長の中央値は、男性34.0cm(IQR 31.0~36.5cm)、女性30.5cm(同28.0~33.0cm)だった。

機能予後不良のORは3.0

 ふくらはぎ周囲長低値の有病率は26.7%だった。ふくらはぎ周囲長が低値の群は、高齢(P<0.001)、女性が多い(P<0.001)、BMIが低値(P<0.001)、NIHSSスコアが高値(P=0.001)、脂質異常症の割合が少ない(P=0.014)、高齢者栄養評価指標(GNRI)が低値(P<0.001)という特徴が見られた。また、この群はリハビリテーション時間が短く(P=0.002)、入院期間が長く(P=0.026)、自宅退院率が低かった(P=0.001)。ふくらはぎ周囲長と嚥下機能との関連は認められなかったが、発症前および退院時のmRSスコアはふくらはぎ周囲長低値群で有意に高かった(P<0.001)。

 多変量ロジスティック回帰分析では、ふくらはぎ周囲長低値〔オッズ比(OR)3.036、95%CI 1.700~5.422、P<0.001〕、年齢(同1.089、1.059~1.119、P<0.001)、NIHSSスコア(同1.229、1.158~1.304、P<0.001)、脳卒中既往(同1.992、1.090~3.641、P=0.025)が、機能予後不良と独立して関連していた。

 これらの結果を踏まえ、佐藤氏らは「急性脳卒中患者における入院時のふくらはぎ周囲長低値は、脳卒中発症後12カ月時の不良な機能的転帰と関連していた。急性期において容易に測定可能なふくらはぎ周囲長は、不良な転帰を予測する指標となりうる」と結論。「ふくらはぎ周囲長と機能予後との因果関係を解明するには、多施設前向き研究が必要である」と付言している。

医学ライター・小路浩史