放射線科医は燃え尽き率が高いとされる。中国・Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのHui Liu氏らは、放射線科医を対象に、診療での人工知能(AI)使用と燃え尽き症候群との関連を検討する横断研究を実施。両者の間に用量依存的な関係が見られたことをJAMA Netw Open(2024; 7: e2448714)に報告した。(関連記事「イヌの飼育が放射線科医の燃え尽き軽減」)
1,143施設で質問票調査実施
2023年5~10月に、中国の放射線診療品質管理システムを通じて、1,143施設の放射線科医を対象に質問票による調査を実施。AIを定期的または常に使用していると報告した放射線科医をAI群に分類し、非AI群との比較を行った。
燃え尽き症候群の評価には、Maslachバーンアウト調査票(MBI-HSS)の中国語版を用い、情緒的消耗感または脱人格化が1症状以上ある場合を燃え尽き症候群と定義した。また、労働負荷は労働時間、画像解釈件数、施設レベル、装置の種類、職場での役割を基に評価し、AIの受容度はAIに関連する知識、態度、自信、意図を考慮した潜在クラス分析により判定した。
AI使用と燃え尽き症候群およびその構成要素との関連の解析には、傾向スコアに基づく一般化線形混合ロジスティック回帰を用いた。また、AI使用、労働負荷、AI受容度の交互作用は加法スケールおよび乗法スケールで評価した。
AI使用による燃え尽きのオッズ比は1.2、情緒的消耗感が寄与
対象の放射線科医は計6,726人〔女性35.3%、年齢中央値41歳、四分位範囲(IQR)34~48歳〕で、AI群が3,017人〔同37.6%、40歳(33~47歳)〕、非AI群が3,709人〔同33.5%、42歳(34~49歳)〕だった。
燃え尽き症候群の加重有病率は、非AI群に比べAI群で有意に高かった(38.6% vs. 40.9%、P=0.006)。
逆重み付けによる共変量の調整後、AI使用は燃え尽き症候群のリスク上昇と有意に関連していた〔オッズ比(OR)1.20、95%CI 1.10~1.30〕。この関連には情緒的消耗感の寄与度が高かった(同1.21、1.10~1.34)。
また、AI使用頻度と燃え尽き症候群には用量反応関係が認められた(傾向のP<0.001)。この関係は労働負荷が大きく、AI受容度が低い放射線科医でより顕著であった。
これらの結果を踏まえ、Liu氏らは「放射線科医の燃え尽き症候群に関する横断研究により、頻繁なAI使用が燃え尽き症候群リスクの増加と関連しており、特に労働負荷が大きい場合やAI受容度が低い場合に顕著であることが示された」と結論。「さらなるエビデンスの構築には縦断研究が必要である」と付言している。
(医学ライター・小路浩史)