「医療だけでは、もう古い」
病院が街づくりに貢献
~熊本総合病院の軌跡と奇跡〔6〕~
19年4月には基幹型臨床研修病院としてもスタートする。臨床研修病院には、基幹型と協力型の二つがあり、基幹型は診療体制、指導体制、医療安全体制の充実など複数の基準を満たす必要がある。実際、研修医からの評判も「職員みんな仲が良く、風通しや雰囲気がよいと先輩から聞いた」「医局が全科共同の大部屋になっていて各科の垣根が低く、相談しやすい」と上々だ。
「私が来た当初は、医師が面談を申し込んでくれば辞職の話でしたが、今は違います」。06年に23人まで減っていた医師も、いまや3倍近い68人。自ら希望して熊本総合病院で働いてくれている。
病院の前に歩きたい歩道を整備
◇地域再生の原動力に
病院が街づくりの中心になって、地方再生の原動力になる―。それが一流ホテルのような病院を建てた一番の理由だ。島田病院長が目指すのは、病院を中心にした街づくり。八代の街の未来予想図を独自に描いている。
街の中心に広場と散歩道があり、その周辺に病院、介護施設、リハビリ施設、高齢者住宅、市役所、郵便局、アーケード街などを配置する。そうすれば、高齢者が日常生活で必要なことを、すべて歩いて済ませられる。その周辺に住宅、さらにその郊外に職場を配置すれば、渋滞の心配もない。
「病院は医療だけをすればいいというのは、もう古いと思うんです。地方都市は街づくりができなければ、人口はどんどん流出してしまう。今の地域の人たちのみならず今後の世代を超えた人たちが誇りに思ってくれるような街づくりを病院が中心になってやっていくべきと思います。そうすれば、逆に流入を含めて、地方の人口増となることは間違いありません」
まちなか病院を核としたストック型まちづくりのモデル
病院を中心とした街は、安心して年をとれる街・安心して子供を生み育てられる街でもある。こんな街が日本各地にできれば、高齢化の進展にも明るい兆しが見えてきそうだ。
【熊本総合病院】
1948年に病床数100床の健康保険八代総合病院として開設。段階的に増床され、2000年には14診療科、344病床にまで拡大した。その後、経営が悪化して次々に医師が辞め、患者数は減少の一途をたどった。熊本県内のつぶれる病院ナンバーワンとまでささやかれたが、06年に病院長に就任した島田信也氏は徹底的な改革を断行。グループトップの黒字病院に生まれ変わった。新病院は、地域のランドマーク的な存在になり、街の活性化にも一役買っている。(了)(中山あゆみ)
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【熊本総合病院の沿革】
1948年 公益事務組合会館を改築し、100床で開設
50年 八代総合病院 105床となる
54年 手術棟を新設し、120床に増床。
57年 200床(一般100床、結核100床)に増床
58年 財団法人熊本県社会保険協会より社団法人全国社会保険協会連合会に経営委託
59年 218床(一般168床、結核50床)に増床
64年 243床(一般143床、結核100床)に増床
307床(一般207床、結核100床)に増床
72年 腎センター新設
74年 糖尿病センター新設
胃腸センター新設
75年 307床(一般病床)に増床
麻酔科新設
85年 340床に増床
86年 脳神経外科、放射線科を新設
98年 創立50周年記念講演会開催
2000年 感染症病床4床増床 344床(一般340床、感染症4床)
03年 皮膚科常勤医がゼロに
04年 脳外科常勤医がゼロに
05年 婦人科、耳鼻科常勤医がゼロに。脳外科常勤医1名、麻酔科常勤医3名から1名へ。小児科常勤医2名から1名へ。
06年 整形外科常勤医ゼロ。小児科閉鎖。呼吸器科常勤医2名から1名へ。50床閉鎖。泌尿器科常勤医ゼロに。
06年10月 第8代院長に島田信也病院長就任。
07年 全職員へのヒアリング
医師のリクルートを推進
整形外科常勤医師3名
耳鼻科常勤医師1名で診療再開。
50床再開
2007年度決算で単年度黒字達成
医師総数27名
08年 累積赤字7億円を解消
消化器内科4名増員
放射線科1名増員
総合内科新設
神経内科新設
新病院建設に向け八代白百合学園高等学校跡地購入
09年 黒字額が全国社会保険病院の中でトップに
50床再開し、344床に復活
医師総数34名
10年 熊本県がん診療連携拠点病院に指定
新病院建設
電子カルテ導入
眼科、泌尿器科常勤医1名で再開
呼吸器内科医1名増員
11年 新病院起工式
泌尿器科1名増員
脳神経外科、入院・手術再開
12年 新病院上棟式
13年 新病院竣工
15年 心臓外科新設
17年 患者専用駐車場整備
18年 創立70周年記念パーティー
最新式ロボット手術ダヴィンチXi導入
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(2019/03/29 06:05)