Dr.純子のメディカルサロン

職場の人間関係、注意すべきは女性同士のストレス 第35回

 職場での女性同士の対人関係ストレスは、表立って大きな問題になることは多くありません。ですが、職場における居心地の悪さを生み出す大きな要因となっていることがあります。

写真はイメージです(EPA時事)

写真はイメージです(EPA時事)

 女性同士の問題については、男性社員が介入しにくいということもあり、かなり根深くなることがあり、要注意です。

 ◇職場に微妙な雰囲気

 社員の福利厚生に気を配っている企業に勤務する30代のAさん。共働きで、産休明けで復帰しました。現在、時短勤務を続けています。

 その企業では、出産後も仕事を続ける女性はまだわずかです。しかし、職場はこうした働き方をする女性を支援していて、先輩社員にも共働きで、子育てをしつつ、仕事を続ける例があるので、Aさんも安心して仕事に復帰しました。

 ところが、社内には微妙な雰囲気があります。未婚で仕事を続ける女性が多く、シフトが朝6時からという早い勤務もある中で、時短勤務のAさんは、シフトの中では最も負担が少ない昼間の時間帯の勤務です。

 早朝勤務の女性が何気なく、「時短の人が朝のシフトに入ってくれればいいのに」というのを聞いて、肩身が狭い感じがしたと言います。

 表立っての時短勤務への不満を言われることはないのですが、微妙に会話の中に入れなかったりして、居心地が悪いそうです。

 「仕事自体より、こうした雰囲気の居心地の悪さがストレスです」とAさん。ハラスメントまではいかない問題の対策が必要です。

 ◇羨望と葛藤

 ハラスメントにはならないので、注意することはできない。でも、いい雰囲気ではない。そういう状態をコミュニケーション不全といい、改善がより難しくなります。

 それには「時短の人がやり残した仕事で自分の負担が増える」と感じてしまう社員の不満の受け皿を考える必要もあるでしょう。

育児をしながら働く女性専用の窓口があるハローワーク大森(東京・大田区)。記事内容とは直接関係ありません

育児をしながら働く女性専用の窓口があるハローワーク大森(東京・大田区)。記事内容とは直接関係ありません

 生き方が違う女性とは、何となく壁をつくってしまい、コミュニケーションが成立しないという例はよくあります。

 男性には理解がしにくい、こうした現象の背景には、男性に比べて女性の生き方の選択肢が多いこと、また選択肢が広がってきてから日が浅いということもあるでしょう。

 専業主婦、主婦でパート勤務、結婚して正社員、子どもなし、結婚して子育てしながら正社員、子育てしながらパート、未婚で正社員、と生き方の選択肢の多さは男性以上です。

 子どもを欲しいと思いながら勤務している女性にとっては、すでに出産して職場に復帰している女性への羨望(せんぼう)もあり、同僚を応援したい気持ちと葛藤があるという悩みも聞きます。

 企業は、女性が感じている不満感や葛藤を受け止め、異なる生き方をする女性がうまく連携を取るためのコミュニケーション体制について考えていくことが必要でしょう。

 普段のコミュニケーションでお互いの理解が深まれば、生き方を尊重することが可能になります。

 女性が継続して働き続けるために、こうした体制づくりについて考えることが大事だと思われます。

(文 海原純子)



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