FD患者、胃液に腸内細菌が混在
化学療法の重要性増す「膵がん」 福岡内科医会・臨床外科医学会合同講演会
◇異なるストレスへの反応
九州大学医学部心療内科の須藤信行教授は「腸内細胞と脳腸相関」をテーマに、腸内細菌と中枢神経系の関係について講演した。人の腸内細菌数は10の14乗に上り、体細胞の10倍。重さで1~2キロに達する。腸内細菌は無菌の子宮内で育った赤ちゃんに生後定着していくが、須藤教授は「病気との関わり、肥満やアレルギー、精神疾患にも関わりがあるのではないかと注目され、腸内細菌の研究が盛んになっている」と語った。
腸内細菌と中枢神経の関係を探るため、須藤教授は無菌マウス、通常マウス、1種類の細菌を定着させたマウスにそれぞれストレスを与えて比較。無菌マウスはストレスに過剰に反応するほか、細菌の種類によってストレスへの反応が異なることも分かった。また、「常在細菌が宿主の行動を規定するのは、ショウジョウバエや蚊でも証明されている」と語った。
須藤信行・九州大学医学部心療内科教授
◇拒食症の細菌叢
さらに須藤教授は「脳は神経系のほかさまざまな経路で情報交換している。腸内細菌が作るさまざまな物質が神経・神経疾患のキーの細胞に作用することが分かってきた」とした。
人間の場合はどうか。須藤教授は「100年以上前うつ病の患者に生菌製剤を入れて有効であったという症例が報告されている。自閉症も研究されている」と強調。精神疾患の人は腸内細菌の構成が通常と違うことは研究者の一致した見解だとしたものの、「それが原因なのか結果なのかは分かりません」と語り、今後の研究課題になっていると指摘した。
このほか、神経性やせ症、いわゆる拒食症の人は低体重の時、体重を増やすために非常に多くのカロリーを要することから、一たび痩せると体重が増えにくい細菌叢になっているという仮説を立て、異なる細菌叢をマウスに移植して比較。その結果、「やせ症の細菌を移植したマウスは体重増加が不良で栄養効率が低いことが分かった」。
須藤教授は「胃細菌叢について精神面や神経面の作用も考える時代になったと提唱する人もいる」と語った。
(2019/09/19 11:44)