医学部・学会情報

FD患者、胃液に腸内細菌が混在
化学療法の重要性増す「膵がん」 福岡内科医会・臨床外科医学会合同講演会

 ◇半分は生存

 九州大学医学部第1外科の中村雅史教授は、「膵臓の外科治療~ここまで治る!」と題して講演した。膵がんは、かかった患者の9割が亡くなっていおり、死亡率が極めて高い。その8割を占める浸潤性すい管がんは転移が早く、「肝臓に転移するとあっという間に亡くなってしまいます」と中村教授は指摘する。

 また、膵がんは2~3ミリで既に浸潤がんなため発見が難しく、患者が10人みつかれば5人は転移性で切除不能。切除可能は2~3人のみで、残る2~3人は局所進行がんで切除不能か切除可能限界(BR)に分類される。

 手術可能な膵がんの予後に関して、中村教授は「差をつけるのは化学療法だ」と強調した。アメリカでの研究で、抗がん剤「FOLFIRINOX」を術後に投与したところ、生存期間中央値は54カ月だった。「日本では5年生存率が10%。最近はよくなって20~30%になっているが、この研究では半分が生存できた」と語り、化学療法が不可欠になっている治療実態を紹介した。

 ただ、抗がん剤は人種による効果の差が大きく、「欧米人はFOLFIRINOXに耐性があるが、日本人にはかなり強烈といわれている」と付け加えた。

 ◇根治治療が可能に

 手術前はどうか。

 術前に化学療法を行った場合と行わなかった場合を比較した試験で、患者の中央生存期間は化学療法を受けた場合が36カ月で、受けない場合よりも1年延びた。このため、「これまで術前化学療法は推奨されてこなかったが、今年後半から、すべての膵がんに術前の化学療法を行ったほうが良いとなっている」。

中村雅史・九州大学医学部第1外科教授

中村雅史・九州大学医学部第1外科教授

 かつては、大きすぎて切除できないとされていたBR膵がんについても、「化学療法を行うことで切除できるようになり、予後がよいことも分かってきた」。九州・山口の大学連合の研究によると、術前治療して手術を受けたBR膵がん患者の中央生存期間は53.7カ月。即切除が17.8カ月、非切除が14.9カ月だった。

 切除できないとされていた患者はどうか。8カ月以上抗がん剤治療をして完全に切除し、長く生きる患者も出ているという。

 中村教授は「初診時に切除不能とされた膵がんでも、化学療法後に根治的治療が可能になることがある」「新しい膵がんガイドライン治療フローの最後に緩和ケアなどがあるが、その緩和ケアの中に手術が入っている。初診時の段階で誰が延命治療に回るのかは最後まで分からない」と語り、膵がん患者が希望を持てる時代になっていると強調した。


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