治療・予防

中高年に多い肩腱板断裂
治りにくい五十肩は要注意

 肩関節にある「腱板(けんばん)」が切れて、肩の動きに異常が表れたり、痛みを生じたりする「肩腱板断裂」。物を持ち上げる動作が難しくなり、仕事や家事など日常生活に支障を来す。いったん切れてしまった腱板は自然に元に戻ることはないが、治療により症状は改善するという。脇田整形外科(横浜市)で顧問を務める筒井広明医師に聞いた。

 ▽腱板が擦り減って切れる

 腱板は、肩関節の肩甲骨と上腕骨(腕の骨)をつなぐ筋肉の先にある腱で、腕を上げたり、肩を回したりする時に肩の関節を安定させ、スムーズな動きを助ける役割を担っている。ところが、加齢により腱板が変性(老化)して切れることがある。これが肩腱板断裂だ。60歳代以降の発症が多い。初めは部分的な断裂から始まるが、放置すると完全に断裂する恐れもある。

 その原因について、筒井医師は「姿勢が悪かったり、立位が不安定な状態で歩いたりすると、体は腕を使ってバランスを取ろうとします。その際、背骨と腕をつないでいる肩甲骨の周りの筋肉が硬くなり、肩甲骨の動きが悪くなります。そして、肩甲骨が腕の動きに追い付かなくなった肩関節では、腱板が骨とこすれたり無理にねじられたりして、断裂しやすい状態になるのです」と説明する。

 加齢による腱板の変性以外にも、日常動作の繰り返しや、テニスや野球などで肩を酷使したりすることで断裂する例もある。「四十肩や五十肩だろう」と軽く考えて放置されることも多いが、しっかりした診断が必要だ。

 ▽普段から良い姿勢を保つ

 肩腱板断裂を起こすと、肩を動かすときに強い痛みを生じるほか、肩に力が入らず腕が上がらない、強い痛みで夜眠れなくなるといった症状が見られる。

 治療は、痛みや炎症に対する消炎鎮痛剤やステロイド剤、ヒアルロン酸を用いた薬物治療と並行して、リハビリで切れずに残っている腱板や肩甲骨の周りの筋肉を鍛えて肩の動きを回復させる。症状が改善しなければ、切れた腱板をつなぎ合わせる手術を検討する。

 肩に違和感のある人は、姿勢を確認したい。「理想的な姿勢は、横から見た時に、耳、肩、骨盤、くるぶしをつないだ線が一直線になります。この姿勢が自然に保てるようになれば、肩の負担が減り、肩甲骨の動きが良くなります」と筒井医師。肩甲骨の動きを良くする体操も勧められる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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