治療・予防

スポーツ外傷で多い―急性硬膜下血腫
早めの対応が命を救う

 日常生活で歩行中に転んだくらいでは起こらないが、揺すられた程度でも脳の表面の血管が切れる可能性はある。スキーやスノーボードの最中に、軟らかい新雪の上で転んだだけで切れてしまうことがあり、谷医師によると、年間2~3人がスキー、スノーボードでの転倒をきっかけに急性硬膜下血腫で亡くなっている印象だという。また、首がしっかり据わっていない乳児が、大人にあやされた時に脳が揺すられ、急性硬膜下血腫で病院に搬送されることも珍しくないようだ。

 ▽早めの対応がカギ

 交通事故や落下事故などのひどい外傷を伴うものを含めて、致死率は約65%と高いが、スポーツに起因したものであれば、早めに出血を止め、たまった血液を吸引して脳の腫れを抑えることで救命率は上がる。

 「プロボクシングは発生頻度が高いスポーツの一つですが、リングサイドに医師が常駐し、万一のときはすぐ病院に搬送できる体制を整えています。そのため、死亡率は30%程度と、早めの対応により半数以上の命が助かっています」

 運動中に衝突や転倒をした人が、頭痛吐き気のほか、意識を失う、記憶が飛ぶといった症状を示したら、頭の中の出血を疑うサイン。谷医師は「スポーツをするときは、事前に脳神経外科がある近くの病院をチェックしておき、疑わしい場合は素早く搬送することです。動かしてはいけないというのは大きな間違いです」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)

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