授乳に自粛生活が影響、乳房トラブルに
「うつ乳」解消してストレスためないで
◇細菌に感染して悪化も、乳腺炎は予防が大切
授乳中によく見られる乳腺炎には「うっ滞性乳腺炎」と「感染性乳腺炎」がある。
うっ滞性乳腺炎では、乳房の中に母乳がたまり過ぎて炎症が起きる。乳房の腫れやしこり、痛みなどの症状が出、発熱する場合もある。感染性乳腺炎は、乳管や乳頭にできた傷から細菌が感染して炎症が広がり、うっ滞性乳腺炎と同じ症状に加えて、悪寒や震え、38度5分以上の高熱を引き起こすこともある。
普段なら母親に免疫力があるため細菌に負けないが、体力や免疫力が落ちていると感染性の炎症が現れやすい。東京都世田谷区の助産院で院長を務める助産師は「乳腺炎の予防には、新型コロナの場合と同じく、母親の免疫力を落とさないこと。そして頻回授乳を心がけ、いつも乳房に母乳をためないこと」と強調する。
感染性乳腺炎になると、産婦人科や内科などの医療機関で抗菌薬を処方してもらう必要がある。授乳はそれまで通り続けながら、薬を服用する。
◇一人で抱え込まず、助産師にも相談を
母乳がたまって発熱したら、乳腺炎が原因なのか、新型コロナを含む他の原因なのか自分で判断をつけるのは難しい。助産院からみると、乳房マッサージを主とした授乳支援のケアが「3密」を伴うことなどから、こうした人を受け入れられない時期もあった。
露崎さんは、37度5分以上の発熱があった人に来院を断った経験がある。症状を聞いて「乳腺炎だ」と感じても、当時は感染症の指定医療機関への受診を勧めるしかなかった。緊急事態宣言を受けて間もなく助産院の営業を休み、電話相談に応じる態勢を取ったという。
世田谷区の助産師も助産院の営業を自粛する一方で、電話やメールの相談には応じた。「母乳が詰まり乳房が腫れている」「母乳の搾乳方法が分からない」「発熱したが新型コロナか乳腺炎か分からず困っている」といった内容の相談が増えたという。
現在は全国の多くの助産院で電話やオンラインなどのリモート相談を行っており、医師受診の必要性の有無や乳房のセルフケア方法などについてアドバイスを求めることは可能だ。オンライン診療を実施している産科や内科は、厚生労働省のホームページで検索できる。
日本助産師会の渕元純子理事は「先が見えない中、いつもとは異なる子どもの困った反応、授乳や乳房トラブル、親としての不安や戸惑いなどは、異常事態に対する当たり前の反応。話したいことがあればいつでも助産師に相談してほしい。一人で抱え込まないで」と話す。
◇育児に休業なし、心がけたいリラックス
育児には休業はない。外出を控えて家に閉じこもると、気持ちも落ち込みがちだ。母乳の分泌は、精神的なストレスにも影響されるといわれ、好きな音楽を聞いたり、散歩など取り入れたりして心をリラックスさせ、なるべく普段通りの生活を送ることもトラブル予防になるようだ。
また、パートナーはとにかく母親たちの話を聞いて、不安や戸惑いを打ち明けられたら「そうだね」と、まずは共感して寄り添ってほしい。(柴崎裕加)
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(2020/05/26 07:00)