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インフル、コロナ同時流行に備え
日本感染症学会が提言

 日本感染症学会は今年冬のインフルエンザ新型コロナウイルス感染症の同時流行に備え、「提言」を発表した。感染症を専門としない一般の病院や診療所でも症状が似た二つの感染症の診断をスムーズにできるようにするのが狙いだ。作成には日本医師会や東京都医師会の関係者も参加し、感染症専門医以外の視点も採り入れた。

 新型コロナは気温と湿度が低下する冬季にはウイルスの活動が活性化して感染がさらに増す可能性は高い。高熱など似た症状を示し、毎年多数の患者が出るインフルエンザが同時に流行した場合、区別が付かずに診療時に混乱する危険も指摘されている。

1977年12月にソ連で流行したインフルエンザウイルス[国立予防衛生研究所提供]【時事】

1977年12月にソ連で流行したインフルエンザウイルス[国立予防衛生研究所提供]【時事】

 ◇症状類似の際の目安

 同学会理事長の舘田一博東邦大学教授(感染症)は「新型コロナウイルスの現在の流行は一度減速するだろうが、冬には再び流行が拡大することが予想される。

 二つのウイルスに同時に感染する可能性は低いが、症状が類似している患者についてインフルエンザ新型コロナかを区別する必要がある。提言が一つの目安になってくれればよい」と話す。

 インフルエンザであれば突然の高い発熱新型コロナであれば味覚や嗅覚の異常などの特有の症状はある。さらに、「家族がインフルエンザにかかっている」「新型コロナの濃厚接触者だ」など、どちらかの感染症の患者が身近にいるといった情報が提供されれば大きな判断材料になる。

軽症者の検査を集中的に行う「名古屋市PCR検査所」=2020年05月20日 【時事】

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 ◇困難な全患者へのコロナ検査

 しかし、このような情報がなく、診察だけで判別が付かない場合には、何らかの検査が必要になる。このため提言では原則として、「新型コロナの流行が認められる地域」では、インフルエンザが強く疑われる場合以外はできるだけ両方の検査を実施することを勧めている。

 そして実際に地域ごとの新型コロナの流行状況を評価するため、4段階の流行状況の規定と基準を示している。

 なぜ一律に二つのウイルスの検査を行わないか。インフルエンザの迅速診断キットが臨床現場に普及して活用されている一方、新型コロナに有効とされるPCRや抗原などを使った検査法の処理能力には限界があるからだ。

 舘田教授も「インフルエンザが流行すれば、その患者は一日に10万から30万人に上る。全員に新型コロナの検査を実施するのは、検査施設の受け入れ能力的に厳しい」と認める。

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