マスク、手洗いとも80%以上が励行
家庭内感染には危機感薄く 新型コロナ対策の認知度調査ー感染症・感染環境学会
冬になり寒さと乾燥が進むにつれて、新型コロナウイルス感染症の患者が各地で増加している。欧州各国だけでなく、日本でも「第3波」が猛威を振るう。ワクチンや治療薬の開発は進んでいるが、一般への普及にはまだ時間が必要だ。日本感染症学会と日本感染環境学会が行った感染症予防策に関する意識調査では、「手洗い」や「マスクの使用」をしているとの回答が80%を超え、「手指の消毒」も今年3月の前回調査より大きく増加した。ただ、専門家は家庭内感染に対する危機感の薄さを問題点として挙げている。
日常生活の中で感染症予防のために行っていること=日本感染症学会・日本感染環境学会提供
◇増える予防行動
調査は2020年10月、首都圏の20~60歳代の男女200人を対象にインターネットで実施。「行動」の面では、日常生活の中で感染症予防として「手洗い」に取り組んでいるとの回答が前回3月の83.5%から87.7%へと引き続き高水準にある一方、「マスクの使用」は59.3%から87.4%に急増。「手の消毒」も31.9%から65.%へと大幅に上昇した。
さらに「3密回避」の啓発の影響からか、「人混みに近づかない」も31.6%から55.3%に増加した。
◇会食のリスクは軽視
一方で、それぞれの対策の重要性の「認識」については、問題点も見えてきた。「公共交通機関に乗る際にはマスクをする」ことが大切とした回答は82.1%。「帰宅後すぐに手洗いをする」も81.1%だったが、「マスクをしていても3密の場所に行かない」は69.0%、「家族以外と会食をしない」は44.0%にとどまった。
日常生活でマスク着用は当たり前に
この点について東京大学医科学研究所の四柳宏教授は、マスクの使用や手洗いなど基本的な対策についても、「20%近くの人が『できれば守る方がいい』や『あまり気にしなくともよい』などと回答しており、対策の重要性が完全には浸透していないことが分かる」と話す。
さらに、「家族以外との会食」が感染の大きなリスクになっているとの認識が回答の5割を下回ったことは深刻な問題だと言う。四柳教授は、奈良県の調査では1次感染の約68%が飲食の場で出ており、2次以降の感染の約83%が家庭や職場、学校などで生じていると指摘。会食に伴う感染拡大のリスクが十分に浸透していないと強調する。
◇家庭内感染の対策強化を
家庭内感染が増加している原因は家族間の警戒感が強くないことにあると見られる。接触による感染への「警戒心が緩む」との回答は「別居している家族親族」が接触相手の場合で29.3%、「同居している家族親族」の場合で62.2%に上る。四柳教授は「今後の家庭内感染の拡大防止には、家族間での感染対策の強化が必要だ」と語る。(了)
(2020/12/05 05:00)