Dr.純子のメディカルサロン

コロナ予防策、知識のアップデートと共有がカギ 第57回

 最近、新型コロナウイルスの予防に関する行動の差が、人間関係のトラブルにつながり、それがストレスになっているという相談を受けることが増えています。家族間や友達、ご近所、職場などで、新型コロナウイルス予防知識を共有していないことが、その背景にあると思われます。予防知識のアップデートは大丈夫でしょうか。

マウスシールドを着けて選挙活動を行う東京都知事選の候補者。新型コロナウイルス感染予防もでき、顔を認知してもらえるという触れ込みだった=2020年6月18日、東京都新宿区【時事通信社】

マウスシールドを着けて選挙活動を行う東京都知事選の候補者。新型コロナウイルス感染予防もでき、顔を認知してもらえるという触れ込みだった=2020年6月18日、東京都新宿区【時事通信社】

 今年の春ごろは、まだ新型コロナウイルスについての研究が十分ではなく、未知のウイルスということでしたが、最近は、ウイルスの特徴などの研究が進み、情報もアップデートされています。ここで、もう一度、周囲の人たちと情報共有してはいかがでしょう。お友達やご家族で、四つのコロナ・アップデートクイズをしてみましょう。


 〔Q1〕どんなマスクがお勧めか、マウスシールドに効果はあるか 
ほとんどの人が外出時、マスクをするようになりました。マスクにもさまざまな種類があります。どんなマスクが予防効果大でしょうか。また、マスクはせず、マウスシールドで記者会見する政治家もいます。マウスシールドで感染予防は大丈夫なのでしょうか。スポーツクラブに行ったらプールのアクアビクスのクラスでインストラクターがマウスシールドで大声で指導。これは大丈夫でしょうか。

 〔Q2〕屋外では飛沫は風で飛ぶから安心? オープンカフェでマスクをしないで飲食をしながらおしゃべりする友人がいます。一緒にいて大丈夫でしょうか。

 
〔Q3〕窓が開かないオフィスビルは大丈夫? 勤務しているオフィスは2年前建てられた高層ビル。窓は開きません。換気が大切といわれているけど、窓が開かなくて大丈夫でしょうか。

 〔Q4〕タクシーの窓は開ける、開けない? 
タクシーに乗るとき、換気をするために運転手さんの席の窓と自分の座る後部座席の窓を少しづつ開けています。夏はよかったけど、今は寒くて、風邪を引きそう。窓を閉めるとリスクは上がるでしょうか。春頃、テレビで新型コロナ感染予防には、タクシーに乗ったら、とにかく窓を開けて風を入れるようにするといいとコメンテーターの人が言っていましたが、それでいいのでしょうか。

 さて、どうでしたか。一つ一つ、見ていきましょう。

 〔A1〕マスクの種類とマウスシールド まずマスクですが、スーパーコンピュータ―富岳のシミュレーションでは、マスクの素材として不織布が最も高性能で、ウイルスの排出を抑え、流入を防ぐとされています。ただ、大事なのは、その人の顔のサイズにどのくらいフィットしているか、という点です。いくら素材そのものが優れていても、顔にフィットせず、鼻や頬の横に隙間ができていれば、意味がありません。どのくらいきちんとフィットするかも視野に入れて、マスクを選ぶことが大事です。

新型コロナウイルス感染対策上、タクシーは公共の交通機関の中では非常に安全な部類とされる。写真は東京都新宿区で客待ちするタクシー(車両ナンバープレートに画像処理をしています)=2020年4月撮影【時事通信社】

新型コロナウイルス感染対策上、タクシーは公共の交通機関の中では非常に安全な部類とされる。写真は東京都新宿区で客待ちするタクシー(車両ナンバープレートに画像処理をしています)=2020年4月撮影【時事通信社】

 マウスシールドは、大きな粒子の飛沫なら、拡散を抑えますが、マイクロ飛沫という小さな粒子の飛沫になると、抑えることができず、拡散させてしまうことが多いのです。これがエアロゾル感染を引き起こします。大声を出すような状況や、飲食店などのスタッフもマスクが望ましいですね。マスクは、飛沫、マイクロ飛沫の両方の飛散を抑えることができます。

 〔A2〕屋外でも安心ではない 
屋外での飲食やおしゃべりですが、マイクロ飛沫は風で飛びますが、大きな粒子の飛沫は近距離に落ちます。ですから、隣の席の人はリスクがあります。屋外でも、会話をすれば、飛沫は近くの人にかかるので、危険です。

 〔A3〕オフィスビルの換気の安全性は建てられた時期による 2003年にビル管理法が改正されました。オフィスビルをはじめ、多くの人が集まる映画館やホテル・美術館などの中にいる人の健康を守る条文が明確にされたのです。その後の猶予期間もありますが、08年以降に建てられたビルでは、このビル管理法に基づき、1人当たり1時間に30立方メートルの換気が達成できるように造られています。ですから、新しいビルでは、ビルの機械換気の空調に任せて大丈夫と言えます。

 〔A4〕タクシーは外気導入モードでエアコンが安全 タクシーは、外気導入モードでエアコンをつけると、1分間に1回、車内の空気が入れ替わります。ですから、春頃、盛んに「タクシーの窓を開けるように」とテレビで言われていましたが、窓を開けるより、外気導入でエアコンをつける方が効果的ということです。寒い時期、ほっとしますね。今度、タクシーに乗るときは、寒さを気にしなくてよさそうです。

 新型コロナウイルスに関する知識を常にアップデートし、感染予防対策について、家族を含め、周りの人たちと共通知識を持ちたいものです。さらに詳しく知りたなら、順天堂大学大学院の堀賢教授を取材した「コロナ対策~感染制御の専門家に聞く~」の前編後編をご覧ください。

(文 海原純子)

【関連記事】


メディカルサロン