再発予防のための治療―心臓リハビリテーション
適切な運動や生活習慣の継続が大事(国立循環器病研究センター病院 中西道郎医長)
心臓や血管の病気(心血管病)は一度発症すると再発の可能性が高いため、再発予防への取り組みが重要になる。患者が再発予防を心掛けることができるよう心臓リハビリテーションを治療に取り入れている国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)冠疾患科の中西道郎医長に聞いた。
心臓リハビリテーションで体力と自信を回復し、再発予防を
▽1回60分を毎日
心血管病を発症して入院すると、心臓の機能が低下するのに加え、しばらく安静を強いられるため体力が低下する。また、今後どの程度の運動や活動が許されるのかが分からないという不安感が生じる。「心臓リハビリテーションは、患者の体力と自信を回復させ、再発予防法を学び実践する治療プログラムです」と中西医長は説明する。
対象となるのは、心筋梗塞、狭心症、心臓手術後、慢性心不全などの患者で、内容は運動療法や生活指導などだ。
同院では、治療により状態が安定すれば、入院中からリハビリ室で運動療法を開始する。運動療法の基本は、歩行や自転車こぎなどの有酸素運動。筋力が著しく低下していれば、爪先立ちなどの軽い筋力トレーニングも併せて実施する。再発予防のための個別生活指導と併せて、1日60分のリハビリテーションを退院まで毎日行っていく。医師や看護師、栄養管理士など多職種による集団講義も実施される。
「運動療法により、持久力の指標となる最高酸素摂取量が平均1~2割ほど増加することが報告されています。また、心筋梗塞の危険因子とされる高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満などが改善し、動脈硬化の進行抑制につながります」
▽適切な運動を設定
退院後は在宅運動療法を開始するとともに、週1~3回の通院リハビリでの運動療法と生活指導も受ける。退院時と3カ月後の血液検査と心肺運動負荷試験(CPX)により、リハビリ効果が確認されるとともに、最適な運動量や強度が設定(運動処方)され、運動に対する不安感も解消する。
心臓リハビリテーションの保険適応は開始日から150日(5カ月)で、その間は通院リハビリを続けることができる。しかし「再発予防にとって重要なことは、150日間の通院リハビリ終了後も在宅運動療法を継続すること」と中西医長は強調する。例えば、目標運動時間が週150分の場合、通勤や買い物の時間を利用して1日に30分の歩行時間を作れば5日で達成できる。無理な場合は、休日に1時間ほどの散歩でも構わない。普段から早足で歩き、階段を利用することも大事だ。食事は偏食を避け、塩分や油っぽい料理は控える。
中西医長は「特に喫煙は心筋梗塞の大きな危険因子なので、完全禁煙を肝に銘じてください」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/02/15 05:00)
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