医学生のフィールド

【医学生インタビュー】
倍率10倍!やる気のある臨床研修医が集まる人気病院の好循環 武蔵野赤十字病院 研修医と臨床研修部長に聞く

 ◇オンオフがはっきりしている中で救急外来や手術の経験が積める

 ―貴院は消化器が特に強いと聞きましたが、志望するにあたっておすすめの診療科はありますか。

 佐々さん 消化器科、中でも肝臓の分野は特に有名で、肝臓専門の先生がたくさんいらっしゃいます。国内で当院ほど肝臓の治療を積極的に行っている病院はなかなかないということは聞いています。あと救急科は、救急車対応とI C Uでの集中治療、病棟管理までを一人の医師が一貫して行っているのが特徴で強みなのかなと思います。救急外来の回数多く、患者さんは多いのですが、夜11時まで一緒に当直に入る研修医が4人いるので時間に迫られることはなく、一人の患者さんをじっくり診ることができます。

 湊さん オンコールがなく、オンオフがはっきりしている中で、救急外来の経験をかなり積めるというのは研修先としてはポイントが高いです。あと婦人科も全国的にみても手術の件数が多く、手技を磨くための後期研修先としても人気があります。小児科は小児神経や小児循環器といった小児専門の医師がそろっています。

 佐々さん 外科の先生は私の中では体育会系で上下関係があり、話しかけづらいイメージがあったのですが、当院の外科の先生は穏やかな人が多い気がします。後期研修の先生たちもすごく居心地が良さそうです。

 ―人間関係や雰囲気はどのような感じでしょうか。

 湊さん 個人的に同期の研修医が13人というのが人数的にちょうどよく、チームとしてとてもバランスがとれていると思います。何と言っても、指導医の先生が研修医のことを第一に考えてくれて、やりたいことがあれば協力を惜しまず、本当に大事にしてくれます。

 佐々さん 上の先生とは医局が同じで直接指導していただける機会がたくさんあり、コミュニケーションを取りやすい環境にあります。学生時代は上の先生に「お疲れさまです」さえ言えなかったのですが、今は部長クラスの偉い先生にも普通に冗談が言い合えるほど距離が近いです。

 救急外来は当直の先輩と2年目1年目で担当するのですが、夜23時までは2年目2人1年目2人、23時から朝の9時までは2年目1人1年目1人で勤務します。一緒に過ごす時間も長く、当直明けは一緒にラーメンを食べたりして、絆も深まります。

 ◇求められるのは勉強だけでなく、遊びもしっかり楽しめる人

 ―毎年、希望者が多くマッチングの倍率が高いのですが、研修医の先生からみてどういう人が採用されていると思われますか。

 湊さん 採用担当の先生からは、いつも笑顔で人生楽しそうにしている人を選んだと言われました。確かに周りを見ても、楽しそうな人、そして素直な人が多いですね。いろいろな人をバランス良く採用しているみたいなことも聞きました。リーダーシップがある人ばかりだと主張し合って対立する可能性があるので、チームの潤滑油の役割を果たせる人やすごく頭が良くてブレーンになる人など、面接官がよいチームを作れるように組み合わせを考えて採用しているとのことです。

 佐々さん 打たれ強くめげない、いろいろなことに興味あって、志望する診療科以外でも一生懸命な人が多いように思います。普通に勉強や仕事だけじゃなく、遊びもしっかり楽しんでいる人ですね。

 ―後期研修はどういうところに進まれる方が多いのでしょうか。

 佐々さん 学年によって違いますが、主な進路は、自分の出身大学、東京医科歯科大学か関連病院の医局、あとはこのままこの病院に残るという3パターンが多いです。分野によってはそれに強い大学の医局に入る人もいます。学年の半分ぐらい残っていたり、ほとんど残らないこともあり、その代によってまちまちです。最近は、救命科を志望する先輩で残る人が多いのかなと思います。

 湊さん 別の市中病院に行く人も結構います。ただ後期に武蔵野赤十字に残るか残らないかで採用の可否が決まるわけではないと思います。

 ―学力試験がないと聞いていますが、学力の評価はどのようにされるのでしょうか。

 湊さん 募集要項には国家試験が受かる学力があればよいと書かれてあり、それまでの学力は一切関係ないと言われました。学力試験がないなら受けてみようという人も多いのではないかと思います。

全員の写真

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 ◇ロールモデルとなりうる女性医師も多い

 ―女性の割合を教えてください。女性にとって、働きやすい環境なのでしょうか。

 佐々さん 私たちの学年は女子が少し多く、たすきがけの人を入れないと10人中6人が女子4人男子で、一つ下の学年は女子4人男子6人、一つ上は女子3人男子7人です。妊娠して出産予定の先生は9時5時で帰れる仕事をしたり、患者さんの数を調整したりしていて、子育てしながら働き続けられる環境だと思います。指導医で頑張っている女性の先生がいるというのは結構心強いです。

 湊さん ロールモデルとなりうる女性の先生は多いと思いますので、 結婚後や子育て中の仕事について、相談に乗ってくれると思います。将来、自分がどのように働きたいかを考えるきっかけにもなっています。

 ―研修医として1年間働いてみて、実際のところいかがでしたか。よかった点があれば教えてください。

 湊さん 正直つらいことも結構あるし、泣きたくなる瞬間もあるのですが、トータルで考えると予想以上に楽しかったです。本当に人に恵まれていると思います。同期や先輩、指導医の先生方だけでなく、コメディカルの方も優しいし、処方薬のことは気軽に薬剤師さんに聞けたりします。人事課の方にも大変お世話になっていて私たちが研修中につらい気持ちになっている時はいつも気遣って声をかけてくださいます。いろんな方に支えられ、守られて成長させていただいています。

 先輩たちほどうまく教えられないかもしれないけれど、この1年で学んだことを後輩たちにしっかり伝えていければと思っております。

 佐々さん 私が結構いいなと思うのは仕事以外の交流です。伝統として引き継がれているお菓子係というのがあって、医局にお菓子を買っておくだけなんですが、幸せになれる一番大事な係ですね。お菓子があるから医局にいて交流できるみたいなところもあります。あとはハッピーフライデー。1年目の月末の最後の金曜日、いわゆるプレミアムフライデーは1年目の研修医全員、当直が免除になります。おととしまでは「みんなで飲みに行ってこい」と言われて、救急外来は2年目が守るという習慣がありました。昨年はコロナ禍で飲みには行けなかったのですが、交流を深められました。

 また例年は土日に1泊の秋旅行があり、2年目1年目全員を三つのグループに分けて3週間にわたって実施していたそうです。コロナ禍で飲みに行くことさえできないけれど、みんな楽しいことが大好きなので、制限がある中でも広い場所でマスクして飲み食いなしでできることはないかを考えて、ハロウィーンの時には仮装して写真を撮ったりしました。

 ◇学力よりも面接重視 一緒に働きたいと思える人材を採用

 ―杉山先生にお伺いいたします。採用試験はどのように行われていますか。

 杉山先生 例年は採用試験を2日にわたって行っています。1日目に英語のストーリーを読んでもらってどう思うか小論文を書いてもらい、選ばれた方のみ二次試験として2日目にグループディスカッションと個別の面接を行っていました。コロナ禍だった昨年は東京で一泊することが難しい状況だったため、応募者全員に個別面接だけを行って決めました。今年どちらにするかはコロナの状況を見て決めようと思っていますので、今は未定です。

 ―面接重視ということですが、どういう方を採用されているのでしょうか。

 杉山先生 やる気のある人ですね。うちは指導体制がしっかりしていますが、忙しい病院なので、受け身の姿勢で来る人には合わないかなと思っています。教えてください!と自分でどんどん来てくれる人が良いです。採用面接官がこの人と一緒に働きたい、一緒に頑張りたいと思える人を選んでいます。短い面接時間では本当の人間性まではわからないとは思いますが、話してみた印象、どういうふうに働きたいという決意を持っているか、体力的に大丈夫か、研修医同士で仲良くできるか、屋根瓦方式の指導体制に合うコミュニケーション能力や下の子に指導してくれる度量があるか、などをみています。面接ではできるだけ緊張させないようにはしていますが、緊張のあまりうまく話せない人もいます。こういうのは縁なのでマッチしなかったからといって決してその人がよくなかったというわけではありません。

 ◇やる気のある研修医が病院全体のモチベを上げる

 ―杉山先生から見た武蔵野赤十字病院の魅力を教えてください。

 杉山先生 忙しいなりに雰囲気がすごくいいのかなと思います。スタッフ間、ドクター間、診療科の間の垣根も低く、コメディカルの方とのコミュニケーションもしっかり取れていて、質の高いチーム医療が提供できていると思います。やる気のある若い先生が来てくれることが刺激となって好循環を生み出し、病院全体をよくしています。建物がちょっと古いのですが、もう何年かしたら新棟ができるので楽しみにしてください。

 ―学生生活でやっておいた方がいいことはありますか。

杉山先生 医師の仕事に就くと周りも医療系の人たちに囲まれるので、学生のうちに医学以外のことをいろいろ経験しておくことでしょうか。いろんなバックグラウンドを持った患者さんに接するわけだから、患者さんのさまざまな状況を理解できる幅の広い人になってほしいですね。もちろん国試に落ちないようにしっかり勉強はしてもらいたいです。(了)

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