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がん患者・家族の心のケア
~孤独にさせず、頼れる場所を~

「何かあれば、ぜひ来てほしい」と歌谷さん。センターの存在の周知でも頑張っている

「何かあれば、ぜひ来てほしい」と歌谷さん。センターの存在の周知でも頑張っている

 ◇ワンチームで支える

 同院のがん相談支援センターも話を聞いてくれる場所。社会福祉士の歌谷知子さんは「治療費の問題、医療者とのやりとりなど、不安に感じているさまざまな相談があります」と説明する。強調するのは「ここで解決ではない」ということ。「『その問題なら、この科の看護師さんが詳しいですよ』などと、院内のいろいろな分野の人や場所とつなげられる。一緒に相談に乗れる環境をつくっています」(歌谷さん)。院全体で支えられる仕組みだと言える。

 公認心理師の資格を持つ石田真弓准教授は、大西教授と二人三脚で患者をケアする。カウンセリングでは、患者の気持ちの変化を踏まえながら、ストレスに対する行動を分析。不安をどのように整理すればいいかや、考え方の傾向にアドバイスをする。

「がん」と告知され、頭が真っ白でどうしていいか分からないという患者さんに「それは当たり前ですよ。一緒に整理していきましょう」と語り掛け、公認心理師として理解を助ける

「がん」と告知され、頭が真っ白でどうしていいか分からないという患者さんに「それは当たり前ですよ。一緒に整理していきましょう」と語り掛け、公認心理師として理解を助ける

 患者同士、遺族同士の集団精神療法では、生きることの良い側面に気付けるよう進行する。入院病棟にも顔を出す。「私たちのような立場の人がいるということを知ってもらいたい」という。末期がん患者との面談では、あえて死を意識しながら、今までのことを整理できるようにエピソードを聞く。「死んでいくつらさだけではなく、自分が残したいことを話してもらえるよう心掛けています」と静かに語る。

 国のがん対策推進基本計画では、がん患者とその家族ができるだけ質の高い治療や療養生活を送れるように、病状の緩和や心理的な問題などへの援助が終末期だけでなく、がんと診断された時から行われることが求められる、としている。

 大西教授は「がん患者の半数近くに精神疾患の診断がつくこと、家族もケアが必要だということを、全医療スタッフが共通認識として持てればいいですね。うつ病は薬を飲めば治る病気。見逃さないでほしい」と話す。がんになっても、独りで思い悩み抱え込む必要はない。(柴崎裕加)

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