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オンライン診療でピル処方
~生理の悩み、我慢しないで~

 下腹部痛、腰痛をはじめ、吐き気頭痛、疲労や脱力感、イライラするなどの不調を月経前後に感じる女性は少なくないとされる。これらの症状を軽くする効果がある「低用量ピル」を、オンライン診療で処方するサービスが最近目に付くようになった。どんな仕組みなのか、安全性はどうか。サービスを提供する会社などに話を聞いた。

「安心を大事にして展開している」と話す幸村社長

「安心を大事にして展開している」と話す幸村社長

 ◇避妊以外にも効能多く

 女性の社会進出が進む中、日本産婦人科学会の2017年の調査によると、就労女性の半数以上が、日常生活や仕事に影響するような下腹部痛などを月経前後に感じているという。対処法として、市販の痛み止め服用が56.4%と最も多く、次いで対策を行っていないという回答だった。

 また、症状がある人とない人では、欠勤・休業率に差がない一方、仕事の実行能力の低下は症状のある人の方が顕著に見られることから、不調や痛みの自覚がある女性は我慢して仕事をしているという結果が浮き彫りに。

 「生理は我慢が当たり前と思われている」と話すのは、ピルをオンライン診療で処方するサービス「ハーデイズ」を手掛けるウィルミナ社の幸村潮菜社長。日本でピルといえば「避妊薬」のイメージが大きい。幸村社長は「妊娠する確率を下げることで、子宮内膜症など婦人科系の病気になりにくいなど、避妊以外についても研究結果がある。うまく活用すれば、さまざまな人の助けになると思う」と力説する。例えば月経痛の軽減、経血量の減少、ホルモン量の調整による肌のコンディション改善などだ。

オンライン診療の様子(イメージ)

オンライン診療の様子(イメージ)

 ◇安心第一

 オンライン診療と聞くと、利便性ばかりが注目され安全性が心配だが、ハーデイズはテレビ電話のため、対面診療と大差ないやりとりを実現。医師が相談者の表情を見ながら、問診の内容も考慮して適切な処方ができるよう、安全性を重視しているという。「診療する医師は全員女性。相談のしやすさにも配慮した」(幸村社長)。

 診療はスマートフォンの無料通信アプリ「LINE」で問診に記入した後に予約する。テレビ電話はスマホのほか、パソコンやタブレット端末でも可能。診療後数日のうちに、中身が見えないよう工夫されたパッケージで登録した住所に届く仕組みだ。

 取り扱い薬種は3種で、いずれも副作用が起こりにくい低用量ピル。実際に診療している医師は「担当の患者さんがピルを安全に使用できるかどうかを確認するのが最大の目的。全身が見えないこともあり、表情をしっかり見てゆっくり話すなど工夫している」。効果を高めるため、薬の使用方法や特徴についても細かく説明する。「薬が体に合っているかどうか理解するために、自分の体のことを知る必要がある。体調や体質に対する意識を高めることにつながっていると思う」(医師)。

ラインで簡単に操作できる

ラインで簡単に操作できる

 ハーデイズは自由診療だが、診療で月経困難症月経前症候群(PMS)が疑われた場合は保険診療となるため、医療機関での受診を勧めるケースもあると医師は話す。

 ◇サッカー女子WEリーグのチームと協力

 昨年10月に一般の利用者に向けてサービスを開始後、今年3月には、サッカー女子プロリーグ「WEリーグ」に所属するINAC神戸レオネッサと「コンディショニングパートナー契約」を結んだ。選手が抱える月経の問題を、ハーデイズの活用により解決していこうとする試みだ。海外の女性アスリートの多くはピルを服用して月経周期を調整したり、痛みを軽減したりしているといい、「選手たちに知識を得てもらうのはもちろん、監督やコーチ、チームの経営者などマネジメント層に理解してもらうことも目指している」(幸村社長)。

 同チームの伊藤美紀選手は月経時の腹痛に耐え切れず、救急車で運ばれた経験を持つ。診察後は練習に合流。「つらいが、体に無理をさせても練習はしたい。試合も出場する以上は生理を理由に妥協したくない。生理でパフォーマンスが落ちたと思われたくないから」と自分を追い込む。

「どうしても言い出しにくい面はある。男性にも知識を持ってもらえたら」と伊藤選手

「どうしても言い出しにくい面はある。男性にも知識を持ってもらえたら」と伊藤選手

 同じ悩みを持つ選手は少なくないという。伊藤選手は根幹に知識不足があると指摘。「今回の取り組みで、女性として自分の体とどう付き合えばいいかなど学べればいい」と話す。さらに、男性スタッフも一緒に学べば相談しやすくなると期待する。「改善されたらパフォーマンス面だけでなく、気持ちもいい方向にいくと思う。INACをきっかけに、たくさんのチームに広まってほしい」

 チームを運営する安本卓史社長も、この取り組みについて「課題解決の選択肢が増えたと考えている」とした上で「女性アスリートのサポートの一つとして先駆けになれば」と話した。

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