フェムテック
~女性の健康課題を解決する新たな分野~ ジェンダー平等など背景に注目集まる
◇国も期待を寄せるフェムテック
日本の特徴的な動きとしては、政治の世界においてもフェムテックに注目する動きが活発になっていることが挙げられる。
その代表的なものとして、20年10月に設立された、フェムテックに関心を持つ自民党国会議員の有志による「フェムテック振興議員連盟」(以下、「議連」)がある。
この議連は、フェムテックについて二つの面から注目している。一つは、女性とそのパートナーがフェムテック製品・サービスの利用を通じて豊かな人生を送れるようになること、もう一つは、産業としてのフェムテックが日本経済の一つの柱となる可能性があること。
フェムテックという新しい市場が健全に成長するために必要なルールの整備や、規制緩和等の政策を推進することを目指し、大きく3本の柱を掲げて議論を進めている。
1、先進的な技術で、⽣理期間を快適に過ごせる社会に
2、不妊治療を含む妊活を⽀援することにより、⼦どもを望む⼈が希望を実現できる社会に
3、更年期の諸問題を解決し、社会・経済のリーダーとなる世代がより活躍できる社会に
これらに関する課題解決に政策的にどのように取り組むべきか、厚生労働省、経済産業省等の関係省庁やフェムテック事業者らとともに検討を重ねている。
21年3月には、良質なフェムテックの普及に向け、新しい製品・サービスが薬事制度上どのように位置付けられるのか、官民で連携して早急に協議すべきとする第1次提言がとりまとめられ、内閣官房長官をはじめとする政府幹部等に提出された。
議連会議の様子
こうした議連の活動を反映して、政府としてもフェムテックに取り組む姿勢が示された。21年6月18日に閣議決定された、政府の重要課題や予算編成の方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針2021」、いわゆる「骨太の方針」では、初めて「フェムテックの推進」という文言が盛り込まれた。
翌22年6月の骨太の方針にも「フェムテックの更なる推進」という言葉が盛り込まれ、また、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」(女性版骨太の方針)にも具体的な政策について言及しており、引き続き政府においてフェムテックに取り組む姿勢が示されている。
次回以降、議連にて議論されている内容や、そこから導き出された提言の中身、実行された政策等について詳細に紹介したい。(時事通信社「厚生福祉」2023年6月6日号より転載)
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⑴SOMPOひまわり生命 健康応援リサーチ「日本のFemtech(フェムテック)市場の可能性に関する調査」第3回
https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/news/2021/a-01-2022-03-07.pdf
⑵日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」
https://hgpi.org/research/809.html
⑶経済産業省「働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に与える効果と課題に関する調査報告書(概要版)」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/R2fy_femtech.pdf
⑷厚生労働省「事業主・人事部門向け不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30k.pdf
⑸厚生労働省「不妊治療との仕事の両立について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000705287.pdf
⑹厚生労働省・前掲⑸
⑺日本医療政策機構・前掲⑵
⑻米国コンサルティングファーム フロスト&サリバン社調査より
https://www.frost.com/frost-perspectives/femtechtime-digital-revolution-womens-health-market/
⑼矢野経済研究所「フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施」(2022年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3119
⑽経済産業省・前掲⑶
(2023/06/29 05:00)
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