治療・予防

舌に痛み、灼熱感―舌痛症
~「頑張り過ぎる人」らに多く(東京医科歯科大学病院 豊福明科長)~

 舌に明らかな異常がないにもかかわらず、痛みや灼熱(しゃくねつ)感などがある舌痛(ぜっつう)症。東京医科歯科大学病院(東京都文京区)歯科心身医療科の豊福明科長によると、口の中の病気を診る口腔(こうくう)外科に通う患者の1~2割に見られ、中高年の女性が多いという。

舌痛症の主な症状

舌痛症の主な症状

 ◇症状が変動

 「舌痛症は、歯科治療をきっかけに発症することが多い。きちょうめんな人、頑張り過ぎる人、頭や腰など他の部位に痛みがある人は発症リスクが高いです」

 症状は、舌の先端や側面の痛み、ひりひり、ぴりぴりした灼熱感、しびれなど。患者の6割は口の乾きや、苦味や渋味を感じるような味覚異常を伴う。

 1日の中で朝は調子が良いが、午後に症状が悪化するのが特徴だ。「良くなったり悪くなったりを繰り返します。自然に治るケースも5年間で3%程度はあるとされています」

 原因は明らかではないが、「脳が痛みに敏感になっているかもしれない」。痛みを感じる回路、痛みのことばかり考えてしまう回路のどちらかが関わっている可能性や、互いに影響し合うことが考えられるという。

 ◇頑張り過ぎずに

 うがい薬や軟こうなどは効果がなく、歯科医師による心理療法と薬物療法が主体となる。心理療法では「寝不足や疲労がたまっていないか時間をかけて話を聞きます。薬だけでなく生活リズムを見直すことも大事です」。

 薬物療法では抗うつ薬を用いる。「少量から始めて少しずつ増やしていくと、症状が改善し始めることが多い。改善した状態が4~6カ月ほど続いたら、徐々に薬の量を減らします」

 こうした治療で良くならず、心理的因子の影響がより大きいと判断すれば、精神科医師に相談するよう提案することもあるという。

 重要なのは「治療のゴール」。豊福科長は▽全く症状がない▽服薬を続けていれば症状がない▽症状が少し残るが、日常生活に支障はない―のどこを目指すかを、患者とよく話し合うようにしている。そして、舌痛症に悩む人に「頑張り過ぎていませんか。何でも一気に完璧を目指さず、一歩手前で休むことや、あすに延ばすことができるなら、そうしてみてはどうでしょうか」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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