長期のフォロー重要
~尿道下裂(兵庫医科大学病院 兼松明弘教授)~
男児の尿の出口(外尿道口)が陰茎の途中にあり、陰茎が腹部側に曲がった状態になる尿道下裂(かれつ)は、先天的な病気の一つだ。200~300人に1人程度の割合で発症するとされ、珍しくないという。
尿道下裂に命の危険はないが、手術をした場合は長期的なフォローが重要だ。兵庫医科大学病院泌尿器科(兵庫県西宮市)の兼松明弘教授に聞いた。
尿道下裂の形態。外尿道口が会陰部に近いほど重症
◇多くは生活制限なし
通常、男児の陰茎は包皮に覆われ、外尿道口は亀頭部の先端にあるが、尿道下裂では陰茎の裏側や会陰部にある。会陰部に近いほど高度(重症)とされる。また、多くは包皮が陰茎の上側に偏り、陰茎が下側の不足した皮膚に引っ張られて下向きに曲がったような状態になる。「胎児期に、男性の外性器ができる過程で必要なホルモンがうまく働かなかったことなどが原因と考えられています。また、低出生体重児で起きやすい傾向があります」と兼松教授。
出生時や乳児検診などで疑われた場合、小児の泌尿器の病気に対応する施設で確定診断を受ける。重症例では染色体検査を行うなどのケースがある。多くは精巣や腎臓など泌尿器の臓器をエコーで確認し、それらに異常がなければ制限なく生活できる。
◇合併症は成人期にも
ただ、陰茎の屈曲のために将来的に立って排尿することが難しく、勃起障害につながったり本人が陰茎の形に悩んだりする可能性がある。
「そうした可能性を考慮し、保護者と医師が必要と判断すれば手術を行います」。まず、陰茎の周辺組織を切ってできるだけ角度を真っすぐにし、陰茎に合わせた尿の通り道(尿道)を周囲の皮膚などを縫合して形成する。尿道下裂の程度に合わせて、手術を2回に分けるときもある。生後6カ月~2歳ごろまでに行う施設が多い。
退院後は、高校生くらいまで定期的に受診し、排尿の勢いなどを確認する。最近の研究で、性交や結婚、子どもを得るといった男性としてのライフステージの経験率は尿道下裂でない男性と全体ではそれほど変わらないが、高度な尿道下裂の人では性交率が、再手術を受けた人では子どもを得る率が少ないことが分かってきたという。
課題は、作った尿道に穴が開く、尿道が狭くなって尿が出にくくなる尿道狭窄(きょうさく)といった合併症が起こりやすい点だ。特に尿道狭窄は成人後に発症する例もあり、「当院では30歳くらいで発症して再受診し、手術で尿道を作り直す人もいます。大人になって尿が出にくいなどの症状があれば、できれば尿道下裂に詳しい医師のいる、成人に対応する泌尿器科を受診しましょう」と兼松教授は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/02/25 05:00)
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