たばこ「3次喫煙」被害=東京オリパラへ対策
◇肺がんなどリスク上昇
国立がん研究センターの2016年の発表によると、受動喫煙を受けている人の罹患(りかん)リスクは受けていない人に比べ、肺がんで1.3倍、脳卒中1.3倍、虚血性心疾患1.2倍、乳幼児突然死症候群(SIDS)が4.7倍などとなっている。受動喫煙の被害を受けなければ、交通事故による年間の死亡者数の約4倍に当たる1万5000人ががんなどで死なずに済んだ、という推計もある。
最近、喫煙者の周囲にいる非喫煙者が吸い込む副流煙に加えて「3次喫煙」が問題視されている。喫煙者が喫煙時以外に発するたばこ由来の化学物質や臭いによる被害だ。産業医科大・産業生態科学研究所の大和浩教授らの研究によると、喫煙後の呼気に含まれるガス状物質(TYOC)の濃度が喫煙前と同じ状態に戻るまで45分かかる。例えば、オフィスの喫煙室から非喫煙スペースに出た時も、喫煙者が吐く息にはたばこから出たさまざまな化学物質が含まれている。服や毛髪にもたばこ臭が染み込む。喫煙室のドアの開閉に伴い、たばこの煙が押し出されるという。
◇日本の規制は最低水準
世界保健機関(WHO)が2015年に発表した報告によると、①医療施設②大学以外の学校③大学④行政機関⑤事業所⑥飲食店⑦バー⑧公共交通機関―という八つの公共の場所を屋内前面禁煙としている国は49カ国に上る。英国やカナダ、ロシア、ブラジルといった国々だ。これに対し、全く規制していないか、二つ程度の公共スペースしか規制していない国は70カ国あり、日本もこの最低ランクに位置付けられている。
喫煙者にたばこをやめる意思はあるのだろうか。時事通信の世論調査によると、「いずれやめようと思っている」40.3%、「やめないが、本数を減らす」19.0%、「やめるつもりはない」38.7%―となっている。この数字を踏まえると、より禁煙治療を受けやすくすることや、飲食店などでは完全に分離した「喫煙専用室」を設置することが課題と言えそうだ。大和氏は電子たばこや加熱式たばこの使用者について「ニコチン依存からは逃れられないが、有害性を減らしたいと思っている。いわば、禁煙への入り口に立っている人たちだ」と指摘、禁煙外来の受診などを推奨している。(編集委員・鈴木豊)
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(2017/07/05 14:17)