精神科病院の無いイタリア=トリエステ市の脱施設化
精神科病院を廃止した国として知られるイタリア。一体、精神医療の現状はどうなっているのか。同国北東部にあるトリエステ市の精神保健局を視察した東京大学大学院総合文化研究科の石原孝二准教授に聞いた。
◇診断よりニーズ重視
トリエステ市は、同国の精神科病院廃絶運動を主導した精神科医フランコ・バザーリアが活動した町だ。1978年に成立し、世界で初めて精神科病院の廃絶を定めた「180号法」は、彼の名にちなんで「バザーリア法」とも呼ばれる。
現在は各地区に「地域精神保健センター」を設置し、薬の処方からワークショップの開催に至るまで、24時間体制でさまざまな精神保健サービスを提供している。病状に関係なく、メンタルヘルスのケアが必要な人は予約無しで利用できる。
ベッドも数床あり、短期入院も可能だが、原則としてケアの提供は本人の自由選択。治療方針の決定も本人を交えて行われる。「診断よりも本人の主体性やニーズを重視する姿勢が貫かれています」と石原准教授。
夜間は総合病院の精神科救急病棟が対応するが、その後のケアはセンターで行われる。地域の保健当局が地域全体の医療に責任を持ち、施設間の連携も緊密だ。
(2017/10/30 11:34)