女性医師のキャリア

婚活、不妊治療の末、養子をわが子に
~産婦人科医が実践「産まない先の選択」~

 ◇女性自身が妊娠出産を決める

 産婦人科の分野では、妊娠や出産を女性自身が決める権利「リプロダクティブヘルス/ライツ」という概念があります。社会的プレッシャー、家族やパートナーの意向ではなく、自分で出産を決めることの大切さと共に、出産後に女性が子育てをしながら働き続けるためには周囲の援助が不可欠であると痛感しました。女性自身の努力以上に家族の理解や職場の協力によるところが大きく、男性がいかに家事育児を分担できる環境をつくれるか、企業を挙げての支援が何よりも大切だと思います。

 ◇「産まない」ことも選択肢に

 女性や夫婦の中には、妊娠することが難しい方だけでなく、妊娠や出産は希望しないけれど、「子どもは育てたい」「家族が欲しい」と思っている人もいるのではないかと思います。現在、親と一緒に暮らせない社会的養護が必要な子のほとんどが乳児院や児童保護施設に入り集団生活で暮らしています。子どもにとっては可能な限り家庭の中で育つことが望ましいと言われていますが、日本では血のつながっていない子どもを家族として迎え入れる仕組みが海外のように普及していません。特別養子縁組や里親制度があることを、より多くの人に知ってもらい、家族を作る選択肢の一つとして自分の経験を伝えていければと思っています。(了)

聞き手・文:稲垣麻里子、企画:河野恵美子(大阪医科薬科大学医師)

*1令和4年厚生労働省資料「社会的養育の推進に向けて」

https://www.mhlw.go.jp/content/000833294.pdf

*2厚生労働省からは養子縁組の記録は永年で保存するように通知は出ているが、どのような情報をどのような形で保管し、子どもに案内するかどうかなどの指針がないため対応がばらばらになっている。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fdf4848a-9194-4b7c-b228-1b7ed4847d58/f9c42bf4/20230401_policies_jidougyakutai_hourei-tsuuchi_82.pdf

柴田綾子医師

柴田綾子医師

 柴田綾子(しばた・あやこ) 淀川キリスト病院 産婦人科医長。名古屋大学情報文化学部を卒業後、2011年群馬大学医学部に編入。医学部卒業後は沖縄県立中部病院にて初期研修を経て2013年より現職。女性の健康に関する情報発信やセミナーを積極的に行っている。主な著書に「ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム」「女性診療エッセンス100」がある。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医、日本周産期・新生児医学会周産期専門医(母体・胎児)。

【関連記事】


女性医師のキャリア