野球肘、AIで発見
~早期病変を高精度で検出(京都府立医科大学 木田圭重助教)~
成長期に投球動作を繰り返すことで発症する「野球肘」。京都府立医科大学(京都市)と兵庫県立大学(神戸市)の研究チームはこのほど、人工知能(AI)を用いた画像診断で、野球肘の早期病変を高精度に検出できるプログラムを開発した。京都府立医大の木田圭重助教(整形外科学)に話を聞いた。
野球肘
◇初期なら9割完治
肘は、三つの骨が弾力性のある靱帯でつながっているが、過度に投げ込みをすると、そのたびに骨同士がぶつかったり、靱帯(じんたい)が引っ張られたりして、骨または靱帯、それにつながる成長軟骨が傷つく。初期はほとんど症状がないが、徐々に投球時に肘が痛み、伸びや曲がりが悪くなる。
野球肘は、発症部位により主に二つある。手のひらを上に向けたときの小指側の肘に起こる「内側型」と、親指側の肘に起こる「外側型」だ。大半は内側型だが、症状が出にくい上、診断後に長く安静を強いられるのは外側型が多い。野球をする子ども2000人の肘を超音波検査すると3.4%で「外側型」が見られ、その約半数は肘の痛みがなかったとの報告がある。
初期症状がないため発見が遅れ、重症化することが多い。「初期なら安静などの保存療法で9割が完治しますが、進行した場合は5割程度に手術が必要になることもあります」
初期の外側型を発見しようと現在、各地で年1~2回、超音波検査による「野球肘検診」が行われているが、頻度は十分ではなく、検査、診断ができる専門知識を備えたスタッフが不足しているという課題もある。
◇97%の検出精度
研究チームは、超音波検査の画像から肘の骨表面を自動検出し、外側型である「離断性骨軟骨炎(OCD)」が起きているかを瞬時に判別するプログラムを開発。正常と野球肘の子どもの大量の画像データを学習させたところ、最高97%の精度で症状を検出できたという。
「OCDの早期病変を100%近く検出することができました。今後、内側型も含めた全体を検出できるようにしたいです」と木田助教。プログラムが実用化されれば、専門のスタッフでなくてもスポーツの現場で診断できるようになり、早期発見につながる可能性がある。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/12/05 05:00)
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