電気刺激で減塩食品の塩味を強める
~応用を期待(東京都市大学 中村裕美准教授)~
東京大学大学院(東京都文京区)情報学環特任准教授だった中村裕美さん(東京都市大学准教授)らは、顎の皮膚を微弱な電気で刺激して減塩食品を食べると塩味が強まることを明らかにした。

電気刺激と塩味の強さの変化
◇塩味を感じる仕組みとは
なぜ電気刺激で塩味を強く感じるのか。「食べ物が口に入ると、塩(塩化ナトリウム)が、塩味の基となるナトリウムイオンとClイオンという2種類のイオンに電離します。微弱な電流を流すことによって、味を感じる味蕾(みらい)近くにあるナトリウムイオンの量を増やしたり、減らしたりすることができると想定されます」と中村さん。
◇おいしさと健康の両方を
中村さんらは27人を対象に二つの試験を行った。まず、顎に貼り付けた電極から微弱な電気で刺激した状態と刺激しない状態で、低濃度の食塩水(0.3%、0.6%)を飲み、塩味の強さを10点満点で評価してもらった。平均点は、電気刺激した場合の方が刺激しない場合より明らかに高かった。
次に、梅がゆ、ギョーザ、鶏がらスープなど塩分が半分になるように希釈した6種類の食品について、電気刺激を与えた状態と与えていない状態で食べてもらった。すると全ての料理で、電気刺激ありの方が塩味の強さの平均点が高くなった。料理によっては、酸味やうま味も増え、かつ風味も変化することが示された。
2022年の国民・健康栄養調査によると、日本人の1日食塩摂取量の平均値は男性10.5グラム、女性9.0グラム。厚生労働省の目標量である男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満を大幅に上回っている。効果的な減塩対策が求められる中、中村さんは「電気を使った塩味制御を含め、『おいしい』と健康の両方を同時にかなえられる技術で社会に貢献できたら」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/02/13 05:00)
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