現代社会にメス~外科医が識者に問う
救える命を確実に救うためにー茨城県の挑戦
~救急搬送における「選定療養費」徴収~

大井川知事
◇救える命を救うため勇気ある決断も必要
河野 選定療養費の徴収に踏み切ったのは、県知事として勇気の要る決断だったのではありませんか。
大井川 今回の選定療養費もそうですが、政治家として勇気を持って決断しなければならないことがあります。茨城県は常に「挑戦する」を政策の旗印として掲げているので、茨城県の状況を見て、もしこのやり方が望ましいということであれば、他の自治体でも取り組んでいただくとよいかと思います。
本来的には、医療体制をもっと強化する方向が望ましいのですが、なかなかそういう状況にならない中で選定療養費を徴収するのは、「苦肉の策」であることは間違いありません。本質的な解決策というのは、厚生労働省を中心にぜひ国の方でもしっかり考えていただきたいと考えています。
河野 救急搬送における選定療養費の徴収は、救えるはずの命を救うための重要な施策だということがよく分かりました。医療現場にはまだ多くの課題が山積していますが、この制度が救急医療の適正利用に向けた突破口となり得るのか、今後も期待して見守っていきたいと思います。本日はありがとうございました。
聞き手・企画:河野恵美子(大阪医科薬科大学 医師)、文・構成:田中美香
大井川和彦(おおいがわ・かずひこ) 64年茨城県土浦市生まれ。88年東京大学法学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)へ入省。同省で初代シンガポール事務所長などを務めた後、マイクロソフト執行役常務、シスコシステムズ専務執行役員、ドワンゴ取締役を歴任。17年9月、茨城県知事選挙で初当選を果たし、現在2期目。
【大井川かずひこOfficial site】 https://k-oigawa.jp/
河野恵美子(こうの・えみこ) 大阪医科薬科大学一般・消化器外科医師。01年宮崎大学を卒業。06年に出産し、1年3カ月の専業主婦を経て復帰。11年「外科医の手プロジェクト」を立ち上げ手術器具の研究を開始、15年に2人の女性外科医と消化器外科の女性医師を支援する団体「AEGIS-Women」を設立。20年に内閣府男女共同参画局「令和2年度女性のチャレンジ賞」を受賞。22年「手術執刀経験の男女格差」の論文をJAMA Surgeryに発表。24年に「令和6年度女性のチャレンジ支援賞」「平塚らいてう賞 特別賞」(AEGIS-Women)受賞。パブリックリソース財団「女性リーダー支援基金~一粒の麦~」二期生。厚生労働省医学部生向け労働法教育事業の委員。TEDxNambaにも出演。
(2025/05/30 05:00)
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