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循環器内科医の減少に危機感
~学会提言「経済的インセンティブ整備を」~

 近年、外科離れが言われているが、減少率は外科(3.8%)よりも循環器内科(6.9%)と心臓血管外科(5.6%)の方が大きい。同院長は「救急体制に深刻な問題が生じることは必至で、すでに一部の地域で始まっている可能性がある」と危惧する。日本循環器学会の推計では、41年度には50歳未満の循環器医が21年度の約6割程度に減少する見込みだ。

 循環器学会が臨床研究医に対して行った循環器内科医に対するイメージ調査では、ポジティブなイメージとして「やりがいがありそう」「人の命を救えそう」「難易度の高い仕事に挑戦できそう」などの意見があった。一方、ネガティブなイメージは「働くのがつらそう」「リスクがありそう」「自分や家族のために時間が取りにくそう」「生活の質(QOL)が低そう」などだった。森野院長は「いくら若い人に一生懸命『魅力的だ』と伝えても響かないという現実があり、この現実は今後もっと加速するリスクもある」危機感をあらわにする。

 そこで提言では、経済的インセンティブの整備や周りのスタッフに業務を移管する「タスクシフト」の重要性を強調。「そういうことをやって初めて若手医師が選んでくれることになる」と同院長は訴える。

 医師不足対策として病院の集約化が議論になりがちだが、地方には心筋梗塞の治療ができる医師が不足している地域がある。CVITの調査では、全国の2次医療圏のうち35圏域では、急性心筋梗塞に対するカテーテル治療を行う医師が3人以下にとどまっており、101圏域ではカテーテル治療を行っている医療機関が1施設しか存在しないという実態が明らかとなった。心筋梗塞は発症してから早期の治療が求められるため、山地医師は「2次医療圏を越えて違う所まで運ぶのは現実的ではない」と話す。医療圏によっては集約で治療できる病院がなくなる可能性もあり、森野院長は「どの診療科よりも地域集約が困難。大都市部や県庁所在地周辺を除いては、そもそも集約できる地域が少ないのが現実だ」と否定的だ。

心筋梗塞のカテーテル治療を行う施設を探せる「ハートマップ」。地図上の病院の印をクリックすると、認定医数などが表示される

心筋梗塞のカテーテル治療を行う施設を探せる「ハートマップ」。地図上の病院の印をクリックすると、認定医数などが表示される

 ◇循環器病院マップ作成

 CVITは地図上でカテーテル治療を行える病院を検索できる「ハートマップ」を作成し、ホームページで公開している。ハートマップを見れば、会員医師数と認定医、専門医それぞれの人数などが分かる。山地医師は「自分が心筋梗塞だったらどこの病院がいいのか、早めに受診をするときにはどこがいいのかを考えるときに参考に見てもらえれば」と話している。

 併せてCVITは、ハートマップを定点観測し、管轄地域の循環器医療体制の変遷を確認するよう行政に求めている。森野院長は「どのくらいの規模の病院かが分かるのみならず、毎年定点観測すれば医師の人数がいよいよ減ってきたぞということも分かる」と意義を強調していた。(江川剛正)

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