医学生こーたのひよっ子クリニック

第3回 眠たそうにしているお医者さんには診られたくないよ

「わしは眠たそうにしているお医者さんには診られたくないよ」

仲良くなった患者さんに「どんな医師には診られたくないか」と質問した際、このように返答された。間違いない。あたりまえだが、労働時間が適正でないほど医療ミスは起こりやすくなる。

ところが、多くの医師は適正時間以上の労働を強いられているというのが現状だ。

このような事実がある中で、最近は研修医の労働時間が全国ニュースでも取り上げられるようになった。労働時間超過によってさまざまな悲しい事件が起こり、労働基準監督署が数多くの病院に指導を行っている。その結果、休み返上で仕事漬けの毎日を送る、いわゆる『野戦病院』や『ハイパー病院』でも、一定のQOL(生活の質)が保たれるようになってきた。一見この労基の指導は良いものに思えるが、今後さまざまなほころびが出てくると私は予想している。

研修医の労働時間が制限されても、患者の数は変わらない。当然、上級医の負担は今まで以上に増えるが、上級医にも体力の限界がある。病院は今までよりもたくさんの医師を雇わなくてはならなくなるため、医師一人一人に支払える給与は、経営を守る以上低くせざるを得ない。もちろん医師になる魅力は給与ではないが、給与が下がれば優秀な人材の他職種への流出は避けられず、日本の医療の質が低下することは必至である。

今の医療制度ではこのように崩壊は免れない。

労働超過を強いられている医師がいる一方で、自分のキャパシティーの半分も使っていない医師が日本には少なからずいると思う。労働力の再分配がうまくできれば、日本の医療は崩壊しないだろう。

では、そのためには何をしたら良いのだろうか。ありきたりではあるが、医師の給与を忙しさに応じて傾斜をつけることが、最も早い方法だと思う。日本は海外に比べこの傾斜が明らかに低い。しかし、誰しもが思いつくであろうこの方法は、大人の事情でいまだに実現されていない。既得権益にしがみつかず、日本の医療を守っていくという認識を、医師全体で共有していくべきだ。

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