教えて!けいゆう先生

風邪が点滴では絶対に治らない理由

 ◇点滴の目的とは?

 では、風邪をひいた時に点滴は全く必要ないのでしょうか?

 もちろん、そんなことはありません。「風邪の時に点滴をしてもらって実際に楽になった経験がある」という方もいるでしょう。この時の点滴の目的は、脱水を効率的に改善することです。

 もう一度、輸液製剤とポカリスエットの違いを考えてみます。これらは、成分は非常に似ていますが、それぞれの濃度が異なります。例えば、乳酸リンゲル液のナトリウムイオン濃度は131mEq/Lですが、ポカリスエットは21mEq/L しかありません。なぜだと思いますか?

 ナトリウムイオンが131 mEq/Lもあると、しょっぱくて飲むのが大変だからです。つまり、「口から飲む製剤は『味が許容できる』という条件を満たす必要があるが、点滴ではその必要がない」ということがポイントです。

 風邪をひいた時に、水分が十分に取れずに体が脱水状態になり、水分が足りなくなっていることがあります。この時に、点滴で血液と同じ浸透圧の水分を血管から注入すれば、水分を体内に素早く補うことができます。逆に言えば、脱水でない時、つまり口からお茶や水が普通に飲めている時に点滴は全く不要です。

 もしこの時に点滴をしても、水分が過剰になるだけで、何のメリットもありません。むしろ、血管に針を刺して無理やり水分を注入するという行為のリスクの方が大きくなります。

 ◇風邪をひいた時の水分補給

 ここまで述べてきたように、風邪は点滴では治りません。水分補給ができていれば、点滴は全く不要です。ただし、喉が痛くて水分も摂れない、水分を飲んでも嘔吐(おうと)してしまう、という時は点滴が必要になります。

 この時こそ、「口から水分が摂れない時」だからです。もちろんこういうケースでは、「点滴をしてほしい」と頼まなくても医師が必要性に応じて点滴をしてくれますので、心配は要りません。

 一方、水を飲める時は、なるべくスポーツドリンクや、OS-1のような経口補水液を利用し、脱水にならないよう注意しながら療養するようにしましょう。そもそも風邪を治す特効薬は存在しません。風邪薬は、風邪の症状を抑えるだけの効果しかありません。大切なのは、十分に療養すること。それだけです。まして点滴だけを目的に病院に行くのは、体力を奪われるだけで全くもってナンセンスですよ。(了)

武矢けいゆう 医師。専門は消化器外科。月間30万人以上が利用する医療情報ブログ「外科医の視点」で、現役勤務医の立場から、患者さんの役に立つ情報を日々発信中。資格は外科専門医、消化器外科専門医、消化器病専門医など。

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