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高齢者多剤投与はやむなし
日本臨床内科医会アンケート

 処方箋で一つの処方について7剤以上の投薬は「多剤投与(ポリファーマシー)」とされ、診療報酬で減算規定が定められている。日本臨床内科医会は、会員の医師に日常の診療における処方に関しアンケート調査を実施した。その結果からは、高齢者が抱える疾患が多いことを踏まえ多剤投与を容認するとともに、日々の診療で投薬を減らすために努力している実態が浮かび上がった。
 まず、多疾患を有する高齢者への多剤投与について聞いた。「容認できる」が24%、「どちらかといえば容認できる」が41%で、容認派が65%を占めた。これに対し、「どちらかといえば容認できない」23%、「容認できない」8%と否容認派は31%。「わからない」が4%だった。
 自由回答から、多剤投与を容認する代表的な意見を紹介する。
 「多疾患を有する高齢者が多剤投与に至ってしまうことは、仕方がないことだと考える。問題なのは、薬が増えることで健康になっていくと思い込んでいる患者が少なからず存在することだ」
 「高齢者は複数の科を受診することが多く、各科で処方を受けるので多剤となっている」
 「患者の訴えと病状をよく把握し現在の処方と照らし合わせ、不必要な薬をカットするしかない。それでも、処方を減らすと不安を訴える患者も多く、困っている」
 「必要最小限にしても7剤以上になるケースもある。例えば、高血圧、高脂血症、糖尿病などを合併していればやむを得ない場合があることを理解してほしい」
 「生活習慣病を二つも三つも持った患者が多い。薬は長く健康的に生きるために投与されている。多剤投与を『ノー』と言うであれば、昔のように人生50年でよいとするのだろうか」
 ◇かかりつけ内科医が指示を
 一方で、次のようなアドバイスや厳しい指摘もあった。
 「内科医は通常、できるだけ投薬数を減らすことに腐心するが、他科の領域に関しての投薬が多い医師もいる。できれば、かかりつけ内科医(できれば内科専門医)が総合的に判断し、服薬指示ができるようになればよい」
 「要介護5の高齢者で寝たきりの患者の処方薬が若い患者向けのガイドライン通りに処方され、時に2種類以上も出ているのを見ると、がくぜんとする。皆保険の悪い面が出ている」
 ◇ガイドラインと関わる
 次に、多剤投与の背景にある要因として、「医療ガイドライン順守の医療」との関連を感じるかを尋ねた。「感じる」21%、「どちらかといえば感じる」42%、「どちらかといえば感じない」14%、「感じない」9%だった。「わからない」は14%だった。
◇減算規定に疑問
 診療報酬における「多剤投薬減算規定」に関してはどうか。「容認する」4%と「どちらかといえば容認する」25%を合わせて29%と、「どちらかといえば容認できない」29%と「容認できない」41%の計70%を大きく下回った。「わからない」は1%だった。
 「7剤以上がどうしても必要な患者もいるのが現状であり、処方する医師のペナルティーになるのは納得できない」
 「不要な薬剤は投与しない。治療上必要であれば、7剤以上でも処方する。処方が多い方が管理が大変なのに、減算するという考え方はおかしい」
 同規定に対する現場の内科医の視線は厳しい。
 「多剤投与は減算の対象になるので、極力7剤以上にならないように注意する。最近は、合剤が多く出てきたので利用している」との声もあった。

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