ハヤミミDr.純子のメディカルサロン

第22回 禁煙の話に反発する人たち


 知っておきたいニコチンと脳の受容体の関係

 なぜ依存しやすいのか?

 たばこがやめられないのは、ニコチンが持つ薬理作用によるものです。ニコチンは、脳内のニコチン性アセチルコリン受容体に働きかけ、脳の側座核、前頭葉皮質、中脳皮質辺縁系という、報酬や喜び、感情を処理する上で大事な働きをする領域の活性を高めるといわれています。すなわち、気分を高めたいときには高め、気分を落ち着かせたいときには落ち着かせてくれる作用があるのです。

 依存症の研究で知られる米国人のE.J.カンツィアン博士によれば、たばこは、さまざまな感情状態の苦痛を緩和する作用を持ちます。このため、気分がうつ状態になる人にとって依存しやすい物質となり、気分を落ち着かせるためにどうしてもたばこに依存するということになります。

 「たばこにいい作用」喫煙者の思い込みが問題

 「たばこを吸うとリラックスできて緊張がほぐれるんです。こんないいものはないですよ」と語る喫煙者の男性がいました。それは、先に述べたニコチンの持つ薬理作用のためです。気分が不安定な人ほど、たばこに依存しやすく、やめられないという研究報告もあります。

 米国医師会発行の「Journal of the American Medical Association 」誌に発表された大規模な疫学調査では、(1)抑うつ症状が高まるにつれ、禁煙率が低下する(2)9年間の追跡調査で抑うつ症状がない喫煙者の禁煙率は抑うつ症状のある喫煙者の2倍である―ことが報告されています。こうしたことから、喫煙者は抑うつ状態を緩和するためにニコチンを用いている可能性があると論文は考察しています。

 また1200人を対象にした21年間に及ぶ追跡調査で、思春期に気分がうつ状態である場合、後にニコチン依存になるリスクが高いことも報告されています。うつ気分の人ほど、たばこをやめられない。ストレスによる精神的苦痛を和らげるため、たばこを用いて、その薬理作用に依存している可能性が示されています。

 禁煙や受動喫煙の話に過敏に反応する人たちには、それなりに理由があります。そして、それぞれの事情に配慮しながら、禁煙できるようなサポートが必要だと思います。

(文 海原純子)

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