治療・予防

臓器飛び出し、血流悪化も
小児鼠径ヘルニア

 太ももの付け根部分に膨らみができたのをきっかけに見つかることが多い「鼠径(そけい)ヘルニア」は、子どもの1~5%に発症し「脱腸」の名でも知られている。乳児のうちなら自然に治ることもあるが、1歳を過ぎると基本的に手術が必要だ。東京医科大学病院(東京都新宿区)消化器外科・小児外科の長江逸郎兼任講師は「突然、激しく痛みだして緊急手術が必要になることもあります」と話す。

 ▽押し戻す場合も注意

 男児は生まれる直前になると、腎臓周辺にあった睾丸(こうがん)が陰嚢(いんのう)に下がってくるが、そのとき腹膜も一緒に引っ張られて袋状に伸びる。普通この部分は自然に閉じるが、袋状のまま生まれてしまうことがある。この袋の中に腸管などの臓器がはみ出てしまうのが鼠径ヘルニアだ。女児も出生の過程で腹膜が袋状のままになり、卵巣や卵管などが飛び出してしまうことがある。

いつもと違う大泣きは嵌頓のサインかも
 腹圧をかけると臓器が飛び出すものの、あおむけになったり、手で押したりすれば元に戻ることが多い。こうしたケースでは、力ずくで押し込もうとせず、子どもが痛がらないような戻し方をしてあげることが大切だ。

 注意が必要なのは臓器が元に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」だ。臓器が締め付けられて、最悪の場合には血流が悪くなり、壊死(えし)してしまうこともある。

 幼い子どもは自分で症状を訴えることはできない。長江兼任講師は「子どもの泣き方がいつもと違うとか、膨らんだ部分が硬いとか、押しても戻らないといった症状があれば、すぐに小児外科か小児科を受診してください」と呼び掛ける。

 ▽手術は30分程度

 鼠径ヘルニアの治療は臓器がはみ出てしまう部分の腹膜を糸で縛ってふさぐ手術が基本だ。全身麻酔が必要だが、手術自体は30分程度。2、3日入院することが多いが、日帰り手術を実施している施設もある。

 臓器がはみ出ても手で押せば引っ込み、嵌頓もないようなら手術を急ぐ必要はなく、自然に治るのを待つこともある。しかし、1歳以上になった場合は時機をみながら手術することになる。

 「『押すと引っ込むから自宅で様子を見ていても大丈夫だろう』と素人判断をしないで、一度専門医に相談してみてください」と長江兼任講師は勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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