治療・予防

妊娠中のうつ病
不安や悩みは周囲に相談

 妊娠中にうつ病になると、おなかの赤ちゃんの発育が遅れる危険性が指摘されている。妊婦のうつ病は本人も周りも気付きにくい。妊婦の心のケアについて、大阪府妊産婦こころの相談センター(大阪府和泉市)で妊婦らからの相談を受ける後藤彩子医師(精神科)に聞いた。

 ▽長引く場合は注意

小さなことでも周囲に相談を
 「妊娠中はホルモンのバランスの変化で気分が変動しやすく、身体的な負担も大きいため、周囲の祝福ムードとは対照的に、気持ちが沈みがちになることがあります」と後藤医師。産休などで社会から遠ざかって、孤独も感じやすい。普段から気分に波がある、うつ病になったことがある、妊娠に不安があるといった場合は、うつ病が発症しやすいという。

 主な症状は気分の落ち込みや気だるさ、不眠、食欲不振などだ。重症になると妊娠、出産、育児への不安が募り、中絶を選択してしまうケースもある。また、妊娠中のうつ病は産後うつ病につながり、出産後の自殺という危険もある。

 後藤医師は「普通なら『マタニティーブルー』と呼ばれる一過性の気分の落ち込みは10日ほどで落ち着きますが、それ以上続くならうつ病の可能性があります。その際は注意が必要です」と指摘する。

 ▽医師と相談して服薬も

 妊婦がうつ病となった場合、家族は家事を分担するなど日常の負担を減らすことに加え、精神科や心療内科に早めに相談することも大切だ。

 「赤ちゃんへの影響を心配するあまり投薬治療を避ける傾向がありますが、妊娠中のうつ病は赤ちゃんの発育不良や産後うつ病といったより大きなリスクにつながりかねません。うつ病の長期化と重症化を避けるため、専門医と相談しながら服薬も考えるのがよいでしょう」

 妊娠前からうつ病の治療を受けているなら「里帰り出産」などで治療が途絶えないようにすることが必要だ。

 後藤医師は「妊娠、出産に対する不安や悩み、つらさは決して珍しいものではありません。どんな小さなことでも一人で抱え込まず、家族や産科の主治医、保健師など周囲に相談しましょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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