皮膚盛り上がり、カサカサに
乾癬、治療法向上
皮膚の表面が赤く盛り上がり、カサカサに乾いたり、ボロボロと剥がれ落ちたりする乾癬(かんせん)。慢性の皮膚疾患で、日本には30万~40万人の患者がいるとされている。うつる病気と思われやすいが、東京慈恵会医科大学(東京都港区)皮膚科学講座の梅沢慶紀教授は「免疫系の異常による病気で、うつる心配はありません」と話す。
皮膚が乾燥する冬は悪化しやすい(提供・梅沢慶紀教授)
▽皮膚代謝物質過剰に
人間の皮膚は、古い細胞があかとなって剥がれ落ち、新しい細胞に生まれ変わる「ターンオーバー」を繰り返している。そのサイクルは通常1カ月程度だが、乾癬では、皮膚の代謝を促進する物質「サイトカイン」が皮膚の一部分で過剰に分泌され、サイクルが極端に短くなってしまう。こうして細胞の活動が過剰となり、皮膚の表面が盛り上がったり、剥がれ落ちたりする。
遺伝が原因の一つとされるが、それだけでは発症しない。「免疫系の異常が表れやすい体質に加え、喫煙や肥満、あるいは薬剤などの環境的な要因があって初めて症状が表れます」と梅沢教授。全身のどこにでも生じるが、特に出やすいのは頭や肘、膝、腰など皮膚がこすれやすい場所だ。特に皮膚が乾燥する冬は症状が悪化しやすい。
うつる病気ではないのに、「カンセン」という言葉が持つイメージが誤解を招いているという。「それが患者さんに大きな心の負担になっています。乾癬は決してうつらないという正しい理解が周囲にも必要です」
▽軽症でも積極治療
乾癬の主な治療法は四つある。中心となるのが塗り薬で、必要に応じて患部に紫外線を当てる光線療法や飲み薬、注射療法を組み合わせる。治療が難しいと思われてきたが、最近では新薬の登場で皮膚症状がほとんどない状態を長く保てるようになってきた。梅沢教授は「わたしの経験では、漫然と治療を続けなければならない患者さんは少数派で、治療後も良好な状態を保つ人は大勢います」とする。
重要なのは、環境因子が何かを突き止め、取り除くことだ。肥満であれば減量し、喫煙者ならたばこをやめるというように、生活改善を治療とともに行うことで初めて効果が表れる。
梅沢教授は「患者さんの多くは見た目を気にしますが、きちんと治療すれば症状は治まり、生活の質は向上します。軽症であっても塗り薬だけで十分と考えず、皮膚科医とよく相談し自分に合う治療法を探しましょう」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2018/12/28 06:00)