新米医師こーたの駆け出しクリニック

「塩分は控えめに」も状況によりけり 
これが不足すると本当に怖いです 専攻医・渡邉 昂汰

 今回は実際の症例から、皆さんに知っておいてほしいと思ったものを紹介します(個人情報を含むため内容の一部を編集しています)。

汗をかく季節、普段から塩分を控えている人は注意が必要です【時事通信社】


 〔症例〕

 75歳、女性。今まで大きな病気にかかったことはなく、健康には人一倍、気を付けています。

 食事にも気を配っており、最近は暑い日が続いているので、熱中症予防のために水やお茶を小まめに取ることも意識しています。

 数日吐き気が続いたため病院に受診したところ、血液検査で血清ナトリウムが114mEq/L(正常値135~145mEq/L)と低値でした。

 吐き気の原因はこの低ナトリウム血症にあると考えら れ、原因精査のため入院となりました。
 
 ◇低ナトリウム血症とは

 ナトリウムとは、塩化ナトリウム(NaCl)、つまり塩分のことです。そして、低ナトリウム血症とは、その名の通り、体液中のナトリウム濃度が低下する病気です。

  多くの人では120~130mEq/Lで吐き気頭痛が出現し、110mEq/L以下になるとけいれんや意識障害が起き、重症例では死亡することもあります。

 原因は多岐にわたりますが、下痢嘔吐(おうと)、利尿薬の不適切な使用、心不全、腎不全、肝硬変、ホルモン分泌異常などがあります。
 
 ◇この患者さんの原因は?

 検査値異常はナトリウムが低いくらいで、心臓や腎臓、肝臓などの機能異常はありません。ホルモンの数値も正常です。

 さらにお話を詳しく伺うと、塩分を減らした方が良いと聞いて、塩分は極力取らないようにしていたとのことでした。味付けはオリーブオイルや酢を使い、塩分が含まれる飲み物は基本的に取りません。

 この生活歴から、水分をたくさん摂取したのにナトリウムが適切に補給されず、体液が薄まったことにより低ナトリウム血症を発症したと考えられました。
 
 ◇過剰摂取と過度な制限

 日本人の多くは塩分摂取過多に当たるため、高血圧予防のための減塩が大々的に推奨されていますが、適量な塩分摂取は生命維持に必要です。

 日本人の食事摂取基準では、1日当たり男性7.5グラム、女性6.5グラムの摂取にとどめるよう提言される一方で、最低1.5グラムは摂取するようにも言われています。

 また、汗や下痢嘔吐では水分に加えて塩分も体外に喪失しています。このようなときは、スポーツドリンクなど塩分を含むものを取り、ナトリウムも補給する必要があります。

 塩分を抑えることは、高血圧や骨粗しょう症の対策としてとても大切ですが、過度な塩分制限は命を落とし得るということも覚えていただけたらと思います。

(了)


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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